謎に包まれた微生物「ユーグレナ藻」が初めて化石の中に発見される
ユーグレナ藻とは、さまざまな生き物の融合体として知られる単細胞真核生物の一種で、植物のような光合成と、動物のような捕食とを合わせてエネルギーを得ています。ユーグレナ藻は約10億年前に誕生したと考えられつつも、化石記録はほとんど見つかっていませんでしたが、国際的な科学者チームが「発表済みの論文の中にユーグレナ藻の化石を発見した」と主張しています。
Recognition of an extended record of euglenoid cysts: Implications for the end-Triassic mass extinction - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0034666723002129
Microfossils shed light on the long fossil record of euglenoids - News - Utrecht University
https://www.uu.nl/en/news/microfossils-shed-light-on-the-long-fossil-record-of-euglenoids
Bizarre Fossils Are Neither Plant Nor Animal, But a 'Weird Fusion' of Life : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/bizarre-fossils-are-neither-plant-nor-animal-but-a-weird-fusion-of-life
ドイツのハイデルベルク大学で微小生物の化石を研究するアンドレアス・コウツォデンドリス氏を初めとする研究チームは、すでに発表されている科学研究の「広範な論文の痕跡」の中に、古代ユーグレナ藻の化石が隠れているのを発見したと主張しました。これらの化石は、中心部に円形の組織があることもあり、長年「虫の卵」や「シダの胞子」などと誤認されたり、1962年の論文では「シュードシゼア貝」と呼ばれたりしていました。コウツォデンドリス氏によると、ユーグレナ藻の生態や生息地は決して解明されているとは言えず、過去の研究で示された写真や図について「これはユーグレナ藻ではないか」と指摘されたことはなかったとのこと。
論文の共著者であるオランダの古生物学者のバス・ファン・デ・スクートブルージュ氏とポール・ストローザー氏は、約2億年前の堆積物から微生物の化石の特定する作業に2012年ごろから取り組んでいました。その過程で、過去にも確認されていた円形の化石が、ユーグレナ藻の一種である可能性に気づいたそうです。ストローザー氏は「私たちが遭遇した微化石のいくつかは、スロバキアの同僚によって記載されていた現代の代表的なユーグレナ藻の特徴と驚くほど類似性を示しました。問題は、このような主張をしている出版物が世界でたった1つしかないということでした」と語っています。
そこで、スクートブルージュ氏とストローザー氏はアメリカとイギリスの古生物学者と協力し、同様の特徴を持つ化石に関する文献を約500件調査しました。研究に協力したアメリカのウィスコンシン大学オークレア校の古生物学者であるウィルソン・テイラー氏は、「私たちは、これらの微生物の構造に非常に驚きました。顕微鏡で観察したところ、他の多くの藻類とは明らかに異なる構造をしています」と述べています。
古い研究で化石にユーグレナ藻が含まれていることが気づかれなかった大きな理由として、生きたユーグレナ藻が危機を感じた場合などに自己増殖状態になる「嚢胞(のうほう)化」する様子を観察することが難しい点があります。しかし、顕微鏡による観察を趣味とするオーストラリアのファビアン・ウェストン氏が2023年12月に、「めったにみられないユーグレナ藻の嚢胞形成」というムービーを投稿したことが、研究の重要なキーとなりました。ストローザー氏は「本人も自覚しないうちに、ウェストン氏は私たちにとって重要な証拠を提供してくれました。おそらく彼は、顕微鏡下でユーグレナ藻の嚢胞を目撃した地球上で唯一の人物です」とその重要性を語りました。
Euglena Encystment - A Rarely Seen Event - YouTube
オーストラリアの池で採取されたユーグレナ科のミドリムシを4億年以上前の嚢胞化石と結びつけることで、ユーグレナ藻の進化の歴史が大きく解明しました。これにより、さらに古い化石でもユーグレナ藻の発見につながると研究者らは考えています。スクートブルージュ氏は研究について、「どの生物がどのような嚢胞を生成したかがわかったので、それらを古環境の解釈に使用して調査を深めていくこともできます。おそらく、これらの生物は火山や小惑星の衝突によって破壊された巨大生物とは異なり、嚢胞形成能力によってすべての困難を乗り越えてきました」と結論付けています。
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