否定的なレビューをしたYouTuberをカタール航空が出禁に、さらにフライトスタッフも全員クビという衝撃の結末
航空便のレビューをしている人気YouTuberのジョッシュ・ケーヒル氏が、カタール航空のレビューをしたところ、同社から賄賂と引き換えにレビューを取り消すことを持ちかけられたと報告しました。この事件は最終的に、賄賂を拒否したケーヒル氏がカタール航空から出禁になり、問題のフライトに添乗していたスタッフも全員解雇されるという非常に後味の悪い結果で幕を下ろしていることが語られています。
Qatar Airways Bans YouTuber For Negative Review - One Mile at a Time
https://onemileatatime.com/news/qatar-airways-bans-youtuber-negative-review/
Youtuberのケーヒル氏は、6年間で185社以上の航空会社を利用し、合計で650回以上のフライトを経験したというベテランのレビューアーで、YouTubeで最も多くの視聴者を抱えている航空評論家のひとりとも言われています。
そんなケーヒル氏は2023年8月に、スリランカのコロンボからカタールのドーハまでカタール航空のエコノミークラスでフライトし、その際の体験を記録したレビュー動画を「カタール航空のショッキングな衰退」と題してYoutubeに投稿しました。
THE SHOCKING DECLINE OF QATAR AIRWAYS - YouTube
この動画の中でケーヒル氏は、機内食のメニューの選択肢が少ないことやスタッフの態度が悪いこと、トイレが水浸しで不潔だった上に掃除を頼んでも無視されたことなどを指摘した上で、「カタール航空のフライトは平均以下で、世界水準に遠く及ばないものでした。全てが期待外れで、航空会社のパフォーマンスがこんなにも低いのを見るのはかなりショッキングです」とコメントしました。
この動画を投稿してから数日後、ケーヒル氏にカタール航空から電話が入ります。電話の内容は、ケーヒル氏に「動画を削除するなら無料の航空チケットを提供する」と持ちかけるものでした。
ケーヒル氏がこの取引を突っぱねると、カタール航空は次に、劣悪な労働環境を訴えるスタッフのコメントを動画のコメント欄から削除するよう要求しましたが、ケーヒル氏はこれも拒否しました。
それから1週間後、ケーヒル氏はカタール航空から次のフライトの予約がキャンセルされたことと、今後カタール航空にフライトの予約を入れることは許可できないことを告げる電子メールを受け取りました。
カタール航空が処分の根拠とした利用規約では、「機内で撮影をする際は許可が必要」とされていますが、ケーヒル氏によると肯定的なレビューの際にそのような許可を求められたという話は聞いたことがないとのこと。
それからしばらくして、当時の便に勤務していたスタッフからケーヒル氏に「やり取りを撮影する許可を与えたのは確かですが、動画から私と会話している部分を削除するようお願いしなければなりません」「撮影の許可は出していないという宣誓書を書くよう圧力をかけられました」「書かなければ解雇される可能性が高いです」と泣きつくメールが届きます。
それでもケーヒル氏が動画を削除しなかったため、カタール航空は乗務員のプライバシーを理由にYoutubeに削除を申請しました。記事作成時点では、問題のレビュー動画は削除されていませんが、カタール国内のIPアドレスからアクセスすると視聴できないようになっているとのことです。
ケーヒル氏は、「証明することはできませんが、多くの人から、『カタール航空が動画を削除できなかったせいで、問題の便に乗っていたスタッフが全員解雇された』と聞いています」と話しました。
ケーヒル氏がカタール航空とのやりとりについて報告した動画は以下から見ることができます。
BANNED AND BRIBED BY QATAR AIRWAYS - SHOCKING MOVE! - YouTube
この一件を取り上げた旅行特化のニュースサイト・One Mile at a Timeは「航空会社ともあろうものが、これほどまでに自分たちの首を絞めることができるとは、いささか信じられません。カタール航空の最善の対応は、お粗末なサービスについての謝罪声明を発表するか、さもなくば単に無視することでした。実際、ケーヒル氏は動画にかなり大げさなタイトルを付けることがありますが、動画自体はそれほど否定的なものではありませんでした」とコメントしました。
One Mile at a Timeが特に注目しているのは、ケーヒル氏がカタール航空を利用した当時のCEOであるアクバル・アル・ベイカー氏の評判です。One Mile at a Timeによると、2023年11月に突然辞任したアル・ベイカー氏がCEOだったころのカタール航空は、同氏の独裁による非常に風通しの悪い社風で有名だったとのこと。
このことから、One Mile at a Timeは「なぜこのようなことが起きたのかを理解するのは簡単です。おそらく、アル・ベイカー氏がケーヒル氏の動画の存在を知り、部下に動画を削除させるよう指示したのでしょう。そして、誰かがアル・ベイカー氏に『それはまずい対応ですよ』と指摘することもなく、全員がアル・ベイカー氏の望む結果を得るために全力を尽くした結果、こうなったのです」と推測しました。
カタール航空の新しいCEOであるバドル・モハメッド・アル・ミール氏は、長年にわたって問題視されていた「ドーハの社宅に滞在中の客室乗務員に対する外出禁止令」を廃止するなどの改革に着手しており、改善の兆しがあるそうです。
One Mile at a Timeは「ケーヒル氏が経験した一連の出来事は『アル・ベイカー体制』の下で起こったことなので、カタール航空の新CEOの下で状況が少しでも変わることを願っています」と述べました。
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