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Spotifyが新しいロイヤリティシステムを発表、「過去12カ月で1000回再生」や「一部ジャンルは曲の長さが最短2分」で収益化が可能に変更される


音楽ストリーミングサービスのSpotifyが新しいロイヤリティシステムを発表し、収益発生の条件を更新しました。Spotifyは今回の変更を「より多くのアーティストに収益を届けるための変更」と説明しています。

Modernizing Our Royalty System to Drive an Additional $1 Billion toward Emerging and Professional Artists – Spotify for Artists
https://artists.spotify.com/blog/modernizing-our-royalty-system


Spotify’s new royalty scheme picks the winners - The Verge
https://www.theverge.com/2023/11/21/23971616/spotify-royalties-labels-streaming-fraud-pushkin-malcolm-gladwell

Spotifyによる音楽業界への支払い額は増え続けており、その金額は400億ドル(約5兆9000億円)を超えています。それでもSpotifyはあらゆるアーティストに確実にお金が行きわたるようにしたいと考えており、そのためにロイヤリティシステムを更新したと発表しました。

Spotifyは業界パートナー(アーティストのディストリビューター、独立系レーベル、メジャーレーベル、レーベルのディストリビューター、アーティストとそのチーム)と緊密に連携し、「人工ストリーミングの撲滅」「小規模なストリーミングをより適切に扱うための新しいポリシーを導入し、アーティストにしっかりと支払いを届ける」「システムをノイズで操作しようとする人々の抑制」といった施策を実施します。この3つの施策を行うことで、今後5年間でアーティストに対してさらに約10億ドル(約1500億円)の収益をもたらすことができるようになるとのこと。


Spotifyが挙げる3つの問題点は以下の通り。

◆人工ストリーミングの撲滅
2024年初めから、悪質な人工ストリーミング(自動ボットなどを用いた再生数の水増し行為)が検出された場合、レーベルとディストリビューターに1曲ごとに料金の支払いを求めるようになります。これはSpotifyが悪質な人工ストリーミングを検出するために開発した新しい検出技術や、新しく設立されたMusic Fights Fraud Allianceに続く取り組みです。

Spotifyは「そもそも、悪質な人工ストリーミングを行う業者の意欲をなくすことができれば、業界はより良いものとなるでしょう。レーベルやディストリビューターが、誠実で勤勉なアーティストから資金を横取りしようとする既知の悪者の音楽を配信し続けることを、意味のある形で阻止できると我々は信じています。人工ストリーミングを検出して罰金として徴収された資金は、業界とプラットフォームを人為的な活動から守るための継続的な取り組みのサポートに利用されます」と述べました。

◆小規模なストリーミングをより適切に扱うための新しいポリシーを導入
Spotifyでは1億を超える楽曲がホストされていますが、過去1年間でそのうちの数千万曲が1000回以上再生され、平均して月当たり0.03ドル(約4.5円)の収益を上げています。レーベルやディストリビューターは最低出金額として2~50ドル(約300~7400円)を要求し、銀行は取引手数料として1~20ドル(150~3000円)を請求するため、Spotifyから得られる収益を手にすることができないアーティストも多くいるそうです。さまざまな手数料によりアーティストの手元に届くことのない収益は、合計すると年間4000万ドル(約59億円)にもおよぶ模様。

そこで、Spotifyは2024年初頭から収益の分配を「過去12カ月間で楽曲の再生数が少なくとも1000回に達した楽曲」に限定すると発表しました。Spotifyはアーティストの手元に届くことなく宙に浮いた状態となっている年間4000万ドルの収益を、より多くのアーティストに配布したいと考えている模様。

実際、Spotify上に存在する楽曲の99.5%は少なくとも年間1000回以上再生されているため、収益化のハードルを上げることで影響を受けるアーティストはごく少数であるとSpotifyは指摘しています。収益化のハードルが「最低1000回再生」となったため、「楽曲のアップローダーが大量の低品質な楽曲をアップロードしまくり、小銭を稼ぐ」といった悪質な手法を排除することにもつながるとSpotifyは主張しました。


◆システムをノイズで操作しようとする人々の抑制
音楽ストリーミングサービスではホワイトノイズやクジラの音、静音といったジャンルも人気です。リスナーはこれらのジャンルを1日に何時間もストリーミング再生することがあります。これを悪用し、楽曲の長さを収益化のための最低ラインまで下げ、人為的に楽曲の再生数を伸ばし、収益を増やそうとするアップローダーもいるそうです。例えば、一部の悪質なアップローダーはクジラの音を30秒に短縮することで、意図的に高額な収益を生み出している模様。これにより、ノイズをアップロードする人は通常のアーティストよりもはるかに優れた収益機会を得てしまっているそうです。

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そこで、Spotifyは収益化のための最低要件を「最短30秒」から「最短2分」に伸ばすと発表しました。ただし、これはホワイトノイズ、自然音、機械ノイズ、効果音、非音声ASMR、無音といったノイズ関連のジャンルにのみ適用されます。加えて、Spotifyは今後数カ月でノイズ関連ストリーミングを通常の楽曲ストリーミングの数分の一で評価するよう変更する予定であるとしています。

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in ネットサービス, Posted by logu_ii

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