10時間を超える長距離フライト中に座席でうまく眠るためのコツとは?
十数時間飛行機に乗って海外旅行や出張に向かったことがある人は、「眠ろうと思ってもなかなか眠れず、寝不足の状態で現地に着いてしまった」という経験があるかもしれません。フライトの間は自身の座席に着席することが求められ、横になって眠ることは基本的にできないため、普段と同じように眠るのは困難です。そこでマッセイ大学のリー・シグナル氏が、十数時間を超える長距離フライトで質の良い睡眠をとるためのコツについて解説しています。
How can I get better sleep on long-haul flights?
https://theconversation.com/how-can-i-get-better-sleep-on-long-haul-flights-211821
日本からニューヨークまでのフライトの場合、約13時間機内で過ごさなければなりませんが、シグナル氏によると、人間の体は座った状態のような、ほぼ直立した姿勢で眠るようには設計されていないとのこと。そのため、長距離フライト中に8時間しっかり眠ることは困難です。
これまでの研究では、長距離フライト中に操縦席で横になって仮眠を取るパイロットは、短時間の睡眠にもかかわらず飛行機の操縦という非常に優れた仕事を続けることが可能であることが報告されています。同様に、客席においても8時間眠れなかったとしても、適切な方法で睡眠をとることで気分や認知機能の向上が見込まれます。
シグナル氏は、出発時間やアルコール・カフェインの摂取は機内での睡眠能力に大きく影響すると述べています。概日リズム(体内時計)が存在する人間は、日中に出発したフライトでは眠ることは困難です。また、フライト中に覚醒作用があるカフェインを摂取すると、眠ることが困難になり、たとえ眠ることができても眠りが浅くなることが指摘されています。
また、「アルコールを飲んで眠くなるのを期待する」という人もいるかもしれませんが、アルコールは飲んだ人に眠気をもたらす一方でレム睡眠を妨げます。脳は妨げられたレム睡眠を取り戻そうとしますが、体がアルコールの分解などを伴う代謝を行っているせいで睡眠が妨げられます。そのため、機内でアルコールを摂取して熟睡することは困難だとされています。
一方で睡眠薬を服用すると、確かに眠ることは可能ですが、正常な睡眠をとることが困難となり、目覚めた後に寝起きの悪さや眠気を感じることがあると報告されています。
他の方法としては、脳に夜を迎えたことを伝えるホルモンであるメラトニンを摂取する方法が挙げられます。しかし、メラトニンを摂取すれば座席に座った状態でも眠ることができる一方で、目的地のタイムゾーンと自身の体内時計のバランスが崩れてしまう可能性が指摘されています。
航空機の座席という制限がある中で、最高の睡眠環境を作り出すために、シグナル氏は「睡眠に役立つ服やアクセサリーを事前に準備する」ことを推奨しています。シグナル氏によると、脱ぎ着しやすい上着などを用意することで、空調で寒くなった場合着用したり、毛布代わりにしたりすることが可能とのこと。また、アイマスクや耳栓は睡眠を妨げる光や騒音をさえぎることが可能です。
また、眠りにつくために必要なことは首の筋肉がリラックスしていることです。シグナル氏は、窓際の座席の場合航空機の壁にもたれかかることや、必要に応じてネックピローなどの使用を推奨しています。
一方で、シグナル氏は一度目が覚めてしまった場合、無理に眠ろうとしないことを推奨しています。「十分な睡眠をとる」ことにストレスを感じる場合、眠くなるまで機内エンターテイメントの利用や音楽の視聴、読書などを行って過ごしてもいいとのことです。
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