サイエンス

このままでは暑すぎて植物が光合成できなくなり世界の熱帯雨林が消滅する


記録的な猛暑により連日熱中症警戒アラートが発令されるなど、地球の暑さが人間の限界に達しつつあることが肌で感じられるようになりました。さらに、気候変動により植物の葉が光合成できないほど熱くなり、最終的に世界の熱帯林が崩壊する危険性があるとの論文が、科学誌・Natureに掲載に掲載されました。

Tropical forests are approaching critical temperature thresholds | Nature
https://doi.org/10.1038/s41586-023-06391-z

Tropical forests may be approaching a critical high-temperature threshold - University of Plymouth
https://www.plymouth.ac.uk/news/tropical-forests-may-be-approaching-a-critical-high-temperature-threshold

Tropical forests nearing critical temperatures thresholds
https://www.france24.com/en/live-news/20230824-tropical-forests-nearing-critical-temperatures-thresholds

Tropical rainforests could get too hot for photosynthesis and die if climate crisis continues, scientists warn | Live Science
https://www.livescience.com/planet-earth/plants/tropical-rainforests-could-get-too-hot-for-photosynthesis-and-die-if-climate-crisis-continues-scientists-warn

熱帯林は地球にとって不可欠な存在で、地表の面積の約6%を占める熱帯林に世界の動植物種の約半分が生息しています。また、地球上の酸素の32%を生産し、毎年何十億トンもの二酸化炭素を大気から吸収しており、もし熱帯林が消滅すれば地中に貯蔵されていた膨大な炭素が放出され気候変動が一気に加速するおそれがあります。


気候変動による気温上昇が熱帯林の植生に与える影響を確かめるため、アメリカ・チャップマン大学の環境科学者であるジョシュア・フィッシャー氏らの研究グループは、アマゾン熱帯雨林が位置するブラジルなど世界各地の温度を調査し、それが樹冠、つまり樹木の上部にある葉の光合成の限界に達しているかを分析しました。

熱帯林の温度の調査には、国際宇宙ステーション(ISS)に搭載された観測機器・ECOSTRESSが2018年から2020年までに収集したデータと、南米や中央アフリカ、東南アジアの熱帯林に設置された観測装置から得た数千件の測定値が用いられました。

研究の結果、熱帯林の樹冠のピーク温度は平均して34度で、一部は40度に達していることが確認されました。さらに、高い位置にある葉の約0.01%は、光合成機構の機能不全が始まる温度の推定値である約46.7度を上回っていることが判明しました。

たった0.01%かと思ってしまうかもしれませんが、この数値は今後急速に上昇する危険性があると、専門家は指摘しています。フィッシャー氏は「0.01%から0.02%に増えたりはしません。この数値は非線形に跳ね上がり、もっと増加する可能性があります」と話しました。


研究グループが実験室で気温と葉の温度の関係について実験したところ、一部の葉は周囲の温度に比べて最大で8度高くなることがわかりました。また、論文の共著者であるイギリス・プリマス大学のソフィー・フォーセット氏によると、ブラジルの森林では個々の葉が気温より18度高くなるというデータもあるとのこと。

研究グループが、このような高温の影響をシミュレーションしたところ、葉の周囲の温度が現状から3.9度上昇すると、水を蒸散させる働きがある葉の気孔が閉じられてしまい、葉が枯れてしまうという結果になりました。葉の枯死により、冷却能力が落ちたり光合成ができなくなったりすると、残りの葉や枝、そして樹木全体が枯れてしまう連鎖反応が発生し、その影響はやがて熱帯林全体の減少へと発展していきます。

論文の筆頭著者であるノーザン・アリゾナ大学のクリストファー・ダウティ氏は、「葉の10%が枯れると、枝を冷やすことができなくなって枝全体が熱くなります。これによって木が枯れれば、森林全体で同じことが起きると予想できます」と話しました。


今回の発見にもかかわらず、科学者たちは希望を捨てておらず、人類が炭素の排出を抑制し、熱帯林の大量死を回避するまでにはまだ時間が残されていると考えています。

ダウティ氏は「私たちが示した熱帯林の消滅モデルは逃れられない運命ではありません。むしろ、基本的な気候緩和策でこの問題に対処できることを示唆しており、さらなる研究を要する重要な分野の特定に役立つものです。また、炭素の高排出や森林伐採を回避することで、炭素や水資源、生物多様性などの重要な領域の未来を守ることができることも示しています」と話しました。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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