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イーロン・マスク買収後のX(Twitter)から科学者がどんどん離れている、いったいなぜ?


Twitterがイーロン・マスク氏に買収されて「X」と名前を変え、さらにさまざまなシステムが大きく変更されたことで、混乱してソーシャルメディアの移行を考えるユーザーも多く現れています。学術誌のNatureが、Twitterを長年利用してきた科学者たちもマスク氏の買収以降にXを離れ始めていると報じています。

Thousands of scientists are cutting back on Twitter, seeding angst and uncertainty
https://www.nature.com/articles/d41586-023-02554-0


Twitterは誰でも簡単に無料で利用でき、多くの情報をすぐに共有できるという利点があります。この利点は、科学者が論文雑誌を超えて、自身の研究結果を世界中に知らしめることに役立ちます。

例えば、チリのアントファガスタ大学の微生物生態学者であるクリスティーナ・ドラドール氏は「自身の研究を世界に喧伝するのにTwitterが役立ちました」と述べ、Twitterのような普遍的なソーシャルメディアプラットフォームがなければ、科学者が自分の研究をより目立たせる手段がないとしています。

しかし、イーロン・マスクはTwitterを買収し、名前を「X」に改めるだけでなく、アカウントの認証システムを有料会員システムに変え、有料会員に影響力と特権を与える制度を採用しました。そのため、無料ユーザーが閲覧できるツイートの数も制限されたことで、科学者が自身の研究を広く知らしめるチャンスが大きく減ったといえます。


NatureがXユーザーである17万人以上の科学者に連絡を取ったところ、約9200人から回答があったとのこと。その半数以上が過去6カ月間でXに費やす時間が減り、7%弱がXの使用を完全にやめたと報告しています。また、回答のあった科学者の約46%が、MastodonやBlueSky、Threads、TikTokなどといった他のソーシャルメディアプラットフォームに参加していることがわかりました。

Natureは「学術界の多様性や公平性、包括性の促進にTwitterが貢献してきたものが、ソーシャルメディア環境の変化によって台無しになったのではないかと多くの科学者は懸念しています」と述べています。


Natureが「過去にX以外のソーシャルメディアアカウントを作成したことはありますか?」と尋ねたところ、46.1%が「作成したことがある」と応え、そのうちの46.9%がMastodon、34.8%がLinkedIn、27.6%がInstagram、24.9%がThreadsのアカウントを作成したと回答しました。

また、オランダのライデン大学科学技術研究センターのコミュニケーション研究者であるジョナサン・デュデック氏によると、Xを利用している40万人の研究者のプロフィール情報を調査し、X以外のソーシャルメディアのURLにリンクを貼っている割合を調べたところ、およそ3%がMastodonのアカウントを掲載していたそうです。

オーストラリア国立大学の教育およびテクノロジー研究者であるインガー・ミューバーン氏は、プラットフォームが急増したことにより、科学者のコミュニティとコミュニケーションが分断されていると指摘。ミューバーン氏は「Twitterでは、ハッシュタグにアクセスするだけで特定の興味について話している人のツイートを見ることができました。しかし、今は特定のコミュニティや個人に従ってアプリケーションからアプリケーションへと移動する必要があります。みんながどこでたむろしているのかを知るのは困難です」と述べました。


さらにNatureが、自身が責任著者を務めた論文をツイートしたことのある科学者数千人に「過去6カ月間でXの使い方を変えましたか?その理由は何ですか?」と質問したところ、Xでの活動を減らしたり完全にやめたりした人の多くは、「X上で偽アカウントや荒らし、ヘイトスピーチの量が増加しているから」と答えたとのこと。

実際にXでヘイトスピーチが急増していることを研究する団体も存在しますが、Xは「Twitterのデジタル広告ビジネスに損害を与えることを意図した根拠のないデマ」と主張し、法的手段も辞さない構えを見せています。

X(旧Twitter)が「マスク氏の買収後Twitterでヘイトスピーチが急増している」と指摘した非営利団体に訴訟をちらつかせる - GIGAZINE


一方で、ミューバーン氏は「科学がソーシャルメディアに過度に依存するようになったとは思いません」と述べ、Xを失うことが科学事業への致命的な一撃になるとは考えていないという見方を示しています。また、Xの使用をやめたという古生物学者のエミリア・ヤロチョフスカ氏は「ネコの動画の間に科学的なコンテンツが登場するなんて、それはいずれにせよ専門的な分野に自分自身を喧伝するのに適した媒体とは言えません」とコメントし、Xをやめてよかったという思いを述べました。

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in ネットサービス,   サイエンス, Posted by log1i_yk

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