サイエンス

体の柔らかさは何によって決まるのか?


世の中には、バレエダンサーや体操選手のように驚くほど体が柔軟な人もいれば、かがんで靴を履くのにも苦労するほど体が固い人もいます。骨格が違うわけでもないのに関節の可動域が大きく違う理由について、科学系ニュースサイト・Live Scienceが専門家の話を元に解説しました。

What determines how flexible you are? | Live Science
https://www.livescience.com/health/exercise/what-determines-how-flexible-you-are

1995年に開催された第13回スポーツにおけるバイオメカニクスに関する国際シンポジウムで、カナダ・ダルハウジー大学のジェイソン・ホルト氏らは、「柔軟性とは、身体組織が本来持っている性質であり、関節や関節群に損傷を受けることなく達成可能な可動域を決定するものである」と定義しました。この時の発表の中で研究者らは、柔軟性を決定するのは筋肉や結合組織だけにとどまらず、その人の骨格構造がどのように組み合わさっているかも重要だと指摘しています。


専門家によると、柔軟性を決定するいくつかの要因は、生まれつきの個人差によって大きく左右されるとのこと。テキサス州の理学療法クリニック・CORE Therapy & Pilatesで理学療法士として活動しているスティーブン・ダン氏は「柔軟性は関節の構造、筋繊維の長さ、結合組織のしなやかさなど、遺伝的に受け継がれるさまざまな特徴に影響されます」とLive Scienceに話しました。

遺伝的な要因によるものの極端な例としては、関節が柔らかすぎることで機能障害が発生し、場合によっては脱臼などの問題が起きる過剰運動症候群という疾患も存在します。

柔軟性を決定するもうひとつの要素は、年齢です。関節は骨と筋肉をつなぐ腱(けん)と、関節同士をつなぐ靱帯(じんたい)によって支えられていますが、これらの結合組織の柔軟性に欠かせないタンパク質であるコラーゲンエラスチンは、年を取るに従って減少してしまいます。また、軟骨のすり減りや損傷、加齢により筋肉が減る現象であるサルコぺニアでも関節は硬くなっていくため、一般的に高齢者より若い人の方が体が柔らかい傾向があります。

さらに、性別によっても体の柔らかさが違います。2019年に発表された研究によると、女性ホルモンであるエストロゲンによって結合組織のコラーゲン量が増加するため、一般に女性の腱や靱帯は男性のものより柔軟で弾力性に富むとのこと。


柔軟性が体質や加齢によるものなら、体の柔らかさは自分の力ではどうすることもできないのかというと、そうではありません。なぜなら、運動やストレッチによって柔軟性を改善させ、座りがちなライフスタイルによる悪影響を減らすことができるからです。

短期的には、ストレッチにより関節につながっている筋肉と腱が伸びることで、関節のこわばりが解消されます。また数週間単位で定期的にストレッチをすることで、ストレッチに対する耐性がついて可動域が増加するという長期的な効果も見込めることが、国際スポーツ理学療法ジャーナル(IJSPT)に掲載された2012年の研究で示されました。

ストレッチで急に筋肉を伸ばすと、無意識のうちにその筋肉が反対方向に収縮することがありますが、これは筋肉の状態を感知するセンサーである筋紡錘(きんぼうすい)が信号を出して筋肉を損傷から守る防御反応によるものです。この現象は伸張反射と呼ばれており、かっけの検査などでひざをたたくと足が伸びるのもこれが理由です。

ダン氏によると、繰り返しストレッチを行うと神経が刺激に慣れて、伸張反射を起こすことなく動かせる関節の範囲が増えるとのこと。ストレッチで関節の可動域が大きくなるのはこれが理由ですが、同じストレッチをしても効果には個人差があるそうです。


前述のIJSPTの論文では、あらゆる種類のストレッチで柔軟性を高めることが可能なことが示されています。ストレッチは大きく分けて3種類あり、1つ目は筋肉を限界まで伸ばしてその状態を保持する「静的ストレッチ」で、反動をつけずに体を伸ばす柔軟体操がこれに該当します。2つ目は関節を可動域いっぱいに伸ばしつつ積極的に動かす「動的ストレッチ」で、ラジオ体操が典型的な動的ストレッチです。

また、ダンベルを持った腕を伸ばす際のように筋肉を収縮させつつ伸ばす「遠心性収縮」を利用したストレッチも、柔軟性を高めるとのこと。ヨガやピラティスといった低負荷なエクササイズでは、こうしたさまざまなストレッチを実践できるため、関節の可動域の向上に役立つとLive Scienceは述べました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
図書館員の日常業務を体操にした「図書館体操第一」 - GIGAZINE

腰痛を和らげるために「運動」が効果的な理由とは? - GIGAZINE

体を反らせたまま口で自分の全体重を支える世界記録が更新 - GIGAZINE

砂浜で異様な柔軟体操をする少女のムービー - GIGAZINE

定期的なエクササイズの頻度によって動脈硬化と心臓発作のリスクに違いが現れることが研究で確認される - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1l_ks

You can read the machine translated English article here.