サメの心臓の中に体長20cm超の「コンゴウアナゴ」が2匹も潜り込む珍しい事例
海の動物の体内に潜む寄生動物というと、小さな線虫や小魚が思い浮かぶ人が多いはず。しかし、1992年に陸揚げされた死んだサメの心臓からは、コンゴウアナゴが2匹も見つかりました。コンゴウアナゴは発見時には死んでいたものの、胃袋からサメの血が検出されたことから、しばらく生きていた可能性があると報告されています。
Pugnose eels, Simenchelys parasiticus (Synaphobranchidae) from the heart of a shortfin mako, Isurus oxyrinchus (Lamnidae) | SpringerLink
https://doi.org/10.1023/A:1007398609346
Parasitic Eels Found Inside The Heart of a Shark, And We Will Never Unsee The Pics : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/parasitic-eels-found-inside-the-heart-of-a-shark-and-we-will-never-unsee-the-pics
以下は、1992年6月にニューヨーク州モントークに陸揚げされた、体重395kgのアオザメの心臓から見つかったコンゴウアナゴの写真です。クリックするとモザイクが外れた大きい画像を見ることができます。
コンゴウアナゴは腐肉食性の深海魚で、主に海底付近で海洋動物の死骸をあさって生活しており、大きな魚の肉に潜り込むのを好む傾向を持っています。
このコンゴウアナゴが体内に潜んでいたサメは、専門用語で「ファール・フック」、つまり口以外の場所に釣り針が引っかかった状態で海底に沈んでおり、船内に運び込まれたときには死んでいました。その後、冷蔵室で保管された状態で運搬され、海洋学者らが死因を調べるために解剖しました。この時心臓の中から見つかったのが、冒頭のコンゴウアナゴです。
死んだサメとはいえ、サメの体内にコンゴウアナゴが寄生していた事例はこれが初めてだとされています。2匹のコンゴウアナゴは体長が21cmと24cmのメスの幼魚で、冷蔵保存されたことで死んでいたことを除けば、見た目は健康でした。しかも、しばらくの間サメの心臓内で生きていた証拠も見つかりました。
1997年の論文でこの事例を報告した研究チームは、「2匹のコンゴウアナゴの胃は血で満たされており、少なくともエサを食べるには十分な時間、サメの中にいたことを示唆しています。コンゴウアナゴの胃の中にある血は凝固していました。また、どちらのコンゴウアナゴからも腸内容物、つまり消化されたエサや寄生虫は見つかりませんでした」と記しています。
また、サメの心臓には、コンゴウアナゴがいないサメには見られない損傷がありましたが、奇妙なことにコンゴウアナゴが心臓を食い破った時にできるような痕跡は見つかりませんでした。このことから研究チームは、コンゴウアナゴは釣り針で死んだか弱ったかしたサメを見つけて、エラなどから体内に侵入したのではないかと考えています。
論文には「死の直前か死後、2匹のコンゴウアナゴはサメを発見し、エラか喉のあたりに穴を開けて循環器系に入って心臓に達しました。この過程で、コンゴウアナゴは血液を摂取しました」と記されています。
今回のコンゴウアナゴのように、生き物が一時的に寄生生活をするケースは、「条件的寄生」と呼ばれています。短期間であれ他の生き物に寄生できる能力は、生きるために寄生することが必要な「偏性寄生」の動物の進化をひもとく上で重要な意味を持つ可能性があると、科学系ニュースサイトのScienceAlertは述べました。
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