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体内でがん細胞はどのように処理されているのか?


死亡原因で最も多いのは「がん」ですが、体内では、がんにならないように激しい戦いが繰り広げられています。それがどんなものなのか、科学系YouTubeチャンネル・Kurzgesagtがムービーを公開しています。

Your Body Killed Cancer 5 Minutes Ago - YouTube


我々の体の中では、常に免疫系ががんを静かに殺しています。


がんは、遺伝子が傷つくことで生まれる異常な細胞の塊で、増殖を制御することはできません。そして、体内のありとあらゆる種類の細胞から出現する可能性があります。


体内の資源とスペースは有限です。がんは、生き残るために資源を奪い、自分の住む空間を奪い取ります。その過程で、かつて自分の一部だった臓器を破壊することもあります。


しかし「害を及ぼすとはいえ、がん細胞は悪ではない」とKurzgesagtは解説しています。細胞はいわば「タンパク質のロボット」であり、プログラミングに従うだけですが、そのプログラミング内容が破損してしまっているだけだから、というわけです。


細胞の核に詰まったDNAはタンパク質の設計図である遺伝子で構成されています。


遺伝子がコピーされてリボソームに送られ、タンパク質が作られます。


DNAは毎日、何万回と少しだけ破損して変異しています。変異の多くはすぐに修正されるか、問題にならないようなものです。


しかし、何度もコピーしていると、ダメージが蓄積されます。また、新たなエラーが発生すると、それが以後のコピーに引き継がれていきます。


DNA破損の要因は喫煙、飲酒、肥満、アスベスト、日焼け、ウイルス感染などさまざま。しかし、シンプルに長く生きているとそれだけでDNAは破損します。


がんが発生するにあたって重要な変異が3つあります。1つはがん抑制遺伝子(TSG)です。TSGには、DNAの破損を検出して修復するはたらきがありますが、TSGがダメージを受けると細胞は修復方法を忘れてしまいます。


2つめはがん遺伝子の変異。母体内にいるとき、1個の細胞を数カ月のあいだに数兆個にまで増やすため、急速な細胞分裂が行われます。この急成長のスイッチは数が十分になるとオフになるのですが、がん遺伝子が破損すると、基本的に成長スイッチがオンになってしまうとのこと。


3つめはアポトーシスと呼ばれる、プログラム細胞死です。多くの細胞は常に入れ替わっていて、大きなダメージを受けると自ら細胞死します。しかし、このプログラム細胞死の力を失い、成長スイッチが入ると若いがん細胞に変化します。がん細胞は早い段階であれば弱いので簡単に殺すことができますが、変異を続けると防御方法を覚えて、本当の脅威になっていきます。


細胞は常に自らが作ったタンパク質のサンプルを持っていて、MHCクラスI分子を用いてディスプレイしています。中には危険で作ってはいけないタンパク質のライブラリもあり、免疫系のT細胞は特定のタンパク質のサンプルがディスプレイされているのを発見すると、ただちにその細胞を殺します。


もしがん細胞が変異してMHCクラスI分子を作らなくなると、作ったタンパク質がわからなくなるので、T細胞による識別はできなくなりますが、その場合はナチュラルキラー細胞が仕事をします。ナチュラルキラー細胞はMHCクラスI分子があるかを確認し、もしないのであれば「何かを隠しているのだ」と判断して細胞を殺します。


つまり、体の中にできた若いがん細胞は、免疫システムによってほとんどすべてが殺されています。それでもなお我々ががんになるのは、がん細胞がより多くの変異を起こして、優れた反撃に出ることがあるためだとのこと。

Kurzgesagtはがんとの戦いを「軍拡競争」と表現し、多くの治療法が可能性を示し始めていることから、最終的には人類ががんを一掃することになると締めくくっています。

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in 動画, Posted by logc_nt

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