57歳のおばあちゃんシャチ「ロリータ」が水族館から放流され半世紀越しに海へと帰ることが決定
by LEONARDO DASILVA
マイアミ・シークアリウムで50年以上にわたり飼育され、2022年3月に引退するまで長年にわたり優雅なショーで観客を楽しませたシャチのロリータが、家族のいる生まれ故郷の海に帰されることが決まりました。
Lolita, the 2nd-oldest orca in captivity, is finally getting released after more than 50 years | Live Science
https://www.livescience.com/animals/marine-mammals/lolita-the-2nd-oldest-orca-in-captivity-is-finally-getting-released-after-more-than-50-years
Caregivers: Returning orca Lolita to Northwest is risky | AP News
https://apnews.com/article/lolita-tokitae-free-willy-orca-killer-whale-19bf64fc234e0fe15a46c9a79a346738
ロリータは1970年に、ワシントン州ウィドビー島の入り江で他の79頭とともに捕獲されたシャチで、絶滅の危機に瀕している「南部居住シャチ(Southern resident orcas)」のうちの1頭でもあります。もともとは、ネイティブ・アメリカンが話すチヌーク語で「うららかな日、きれいな色」を意味する「トキタエ(Tokitae)」、あるいは縮めて「トキ」との愛称で呼ばれていましたが、4歳の時に捕獲されてマイアミ・シークアリウムに移された際に、ウラジーミル・ナボコフの小説「ロリータ」にちなんだ名前が付けられました。
イギリスの大手一般紙・The Guardianの記事によると、この時の大量捕獲は史上最大規模で、かつ最も広く非難されたシャチ捕獲事件の1つとして記憶されているとのこと。元来、太平洋北西部のネイティブ・アメリカンらはシャチを家族とみなして崇拝していましたが、白人入植者はサケの捕食者として嫌い、時には銃で撃つこともあったため、今日までわだかまりを残しています。
by tifotter
マイアミ・シークアリウムに購入されて以来、ロリータは北米で最も小さいプールで生活しながらも、2022年3月に公開ショーから引退するまで巧みな芸を披露してきました。記事作成時点で57歳のロリータは、飼育下のシャチとしてはシーワールド・サンディエゴに住む58歳のオスのコーキーに次いで2番目に高齢です。
マイアミ・シークアリウムは2023年3月30日に、長年ロリータの帰郷運動を続けてきた愛護団体「フレンズ・オブ・ロリータ(トキ)」と共同で開催した記者会見で、ロリータを故郷の海に帰すことを発表しました。ただし、高齢により少なくともすぐには野生に戻すことはできないため、海に新設された広さ6ヘクタールの囲いに移され、当面はトレーナーに面倒を見られながら余生を過ごすことになるとされています。
イギリスを拠点とするクジラやイルカの保護団体「Whale and Dolphin Conservation」によると、野生のメスのシャチの平均寿命は46歳ですが、中には80~90歳まで生きる個体もいるとのこと。例えば、最高齢の南部居住シャチで、ロリータの母親であると考えられているオーシャン・サンは記事作成時点で95歳にもなります。飼育下のシャチがこれほど長く生きることはめったにありませんが、海に移すことでロリータの寿命が延びることが期待されています。
by Andy Blackledge
シャチの飼育や海への放流は、大きな議論の的となっています。これまで、北米で飼育されていたシャチが野生に戻された例は、映画「フリー・ウィリー」に出演したオスのシャチのケイコだけです。映画のヒットにより有名になったケイコは、大規模な署名運動を受けて2002年に野生に帰されましたが適応できず、翌年27歳で肺炎により命を落としました。
ケイコの死により、シャチを野生に戻すことはできないのではないかという懸念が生じましたが、BBCのドキュメンタリー番組「Frozen Planet II」では、ロシアで飼育されていたシャチが野生のシャチの群れと狩りや遊びをする様子が撮影され、シャチを海に戻すことが可能であることが示されました。
ワシントン州のルミ・インディアン部族の長老で、フレンズ・オブ・ロリータ(トキ)の役員を務めるレイネル・モリス氏はAP通信に対し、「彼女が家族の元に戻らない限り、私たちの家族は壊れてしまいます。彼女が帰ってくれば、命の網は修繕されて元に戻り、私たち人々もまた修復されて回復するのです」と語りました。
一方、ロリータの元トレーナーや海洋哺乳類の専門家らが結成した「Truth 4 Toki」は、ロリータを飼育下に残すことを求める請願書を発表しています。2003年~2009年までの間ロリータのトレーナーを務めたシャナ・シンプソン氏は、「シャチの放流はケイコで一度試みられましたが、大失敗でした。これはふんわりした人間的な感情と幻の目標のストーリーです。トキ(ロリータ)の死を招く結果に終わるでしょう」と話しました。
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