香港の「モンスターマンション」とラスベガスのホテルにおける外観の違いとは?
人口密度が世界第三位の香港では「モンスターマンション」と呼ばれる複雑な建造物が1960年代から1970年代にかけて複数建設されました。作家のアリス・テオン氏はモンスターマンションの特徴である「ディストピア」的な外観とラスベガスの整然とした外観の建造物を比較しています。
The Window Trick of Las Vegas Hotels
https://www.schedium.net/2023/01/the-window-trick-of-las-vegas-hotels.html
1960年代に香港の東区鰂魚涌(クォーリー・ベイ)に建てられたモンスターマンションは益昌ビル・益発ビル・海山ビル・海景ビル・福昌ビルの計5棟が「E」の字の形で組み合わさった商住混合ビルで、約2200戸の住居があるとされています。「モンスターマンション」はその特徴的な外観によって2010年代頃から観光名所になっています。
モンスターマンションに対してテオン氏は「雑然としているこれらの建造物はとても醜いです」と述べています。テオン氏によると、モンスターマンションなどの建造物の外観は雑然として退屈で、大きくて重厚感を感じるため見苦しいとのこと。
以下の動画はアメリカ・カトリック大学のナサニエル・ウォーカー教授が行った講義です。動画の中でウォーカー氏は「人間は秩序と多様性の2つを切望していますが、秩序が多すぎると退屈で抑圧的です。また過剰な多様性は混沌(こんとん)を生み出し、不快にさせます」と述べ、「ギリシャ建築やローマ建築のような美しい古典主義建築は秩序と多様性の微妙なバランスで成り立っています」と解説しています。
A Universal Language in Stone and Steel: Architectural Poetics, Globally Considered - YouTube
ウォーカー氏の解説に感銘を受けたテオン氏は「モンスターマンションの外観を非常に不快に感じるのは、秩序と多様性のバランスが崩壊しているからです」と考察しています。
一方でベラージオやシーザーズ・パレスといったラスベガスのホテルは、4つまたは6つの窓をグループ化し、1つの窓として見せることで、建物を小さく、整然と、威圧的に見せる視覚のトリックが用いられているとのこと。テオン氏は「これらのホテルの外観は非常に魅力的です」と述べています。
この視覚トリックを用いたベラージオは32階建てという巨大な建造物にもかかわらず、18階建てのモンスターマンションの方が大規模かつ無秩序な印象を受けます。
テオン氏は「高層住宅の建設にラスベガスのホテルのような視覚トリックを応用することで、建物の外観をより美しく、より穏やかに見せることができます」と提案しています。
・関連記事
「なぜ古代ローマ時代のコンクリートは2000年もの耐久性を誇るのか?」の謎が明らかに - GIGAZINE
800年近く前に生み出された日本古来の育林方法「台杉仕立て」とは? - GIGAZINE
建築家ザハ・ハディド氏が手がけた未完の奇抜な建築まとめ - GIGAZINE
20世紀の美術や建築に大きな影響を与えた「バウハウス」とは? - GIGAZINE
なぜ「美しく住みにくすぎる家」がアムステルダムの運河沿いには並んでいるのか? - GIGAZINE
・関連コンテンツ