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電子書籍で失敗しAmazonに惨敗した老舗書店チェーンがリアル書店で売上を好転させた方法


Amazonの台頭により、かつて書店でしか手に入らなかった「本」は自宅にいながら購入できるようになりました。街中に店舗を構える書店が軒並み縮小していくなか、昔ながらの本屋であるバーンズ&ノーブルが再び成長を遂げています。バーンズ&ノーブルがどのような戦略を採ったのかについて、大衆文化ライターのテッド・ジョイア氏が明らかにしています。

What Can We Learn from Barnes & Noble's Surprising Turnaround?
https://tedgioia.substack.com/p/what-can-we-learn-from-barnes-and

バーンズ&ノーブルは1886年に設立され、20世紀に繁栄を極めましたが、デジタル時代の到来により衰退の兆しを見せ始めます。


一時期、バーンズ&ノーブルはAmazonのまねをしてオンライン販売を強化し、独自の電子書籍リーダー「Nook」を導入しましたが、ほとんど成功しませんでした。2011年に実店舗での有力な競合相手であるボーダーズが倒産した後も勝つための戦略を見出すことができず、2018年には完全に崩壊していたとジョイア氏は指摘します。この年、バーンズ&ノーブルは1800万ドル(約20億円)の損失を出して1800人の正社員を解雇、ほぼすべての店舗をパートタイムスタッフによる運営に移行しました。また、セクシャルハラスメントの申し立てがあったことから、CEOを解雇しました。

既存店の売上もオンラインの売上も減少し、株価は80%以上下落。デジタル化の大本命である電子書籍リーダーさえも売上が90%以上減少してしまい、ボーダーズと同様に消滅するかに思われたバーンズ&ノーブルはさまざまな改善策を実施します。

一時期、バーンズ&ノーブルは売り場の大部分をおもちゃやグリーティングカード、カレンダーを売るために改装していました。しかし、ジョイア氏は「本屋でおもちゃを買う人が本当にいるのでしょうか?トイザらスすらAmazonに対抗できなかったのに、バーンズ&ノーブルがこれ以上うまくいくわけがないでしょう」と指摘。ほかにも店内にカフェを設ける構想や「バーンズ&ノーブル・キッチン」というレストランを始める計画を実行したバーンズ&ノーブルですが、どれもうまくいかなかったそうです。


苦境のさなかにあった2019年、バーンズ&ノーブルは新たにジェームス・ドーントというビジネスマンをCEOに迎えました。ドーント氏は26歳の時にロンドンで1軒の書店を始めて成功を収めた人物であり、すでにイギリスで苦境にあった書籍小売チェーン、ウォーターストーンズを立て直した実績のある人物でした。

ドーント氏は「本が高すぎるとは思わない」という理由から「価格競争が激しくても本の値引きをしない」という信条の持ち主でした。ウォーターストーンズ買収時、ドーント氏は「2冊買うと1冊無料」というキャンペーンをすべて止めましたが、その理由を「無料で提供することは、その本の価値を下げることになるから」と述べています。

ドーント氏がウォーターストーンズで行った最も驚くべき戦略は「出版社から宣伝費をもらわない」ということ。一度お金を受け取れば常に店内の最も目立つ場所に宣伝用の本を積み上げなければならないという「悪魔の契約」をドーント氏は拒否し、最高の本をショーウィンドウに並べようとしたのです。さらに驚くべきことに、ドーント氏はその決定を店の従業員に任せたそうです。これについてドーント氏は「スタッフが自分の店をコントロールすることで、仕事をもっと楽しんでくれることを願っています」と説明していました。

この戦略は功を奏し、ウォーターストーンズでの返品はほとんどゼロになり、棚に並べられた本の97%が購入されたとのこと。これは書籍の世界では驚異的な数字であるとジョイア氏は指摘します。

この成功をもとにバーンズ&ノーブルのCEOに就任したドーント氏ですが、新型コロナウイルス感染症が流行し始めた年であったため、タイミングは最悪でした。しかしドーント氏はパンデミックを機に店内のすべての棚から本を取り出し、その本を置いておくかどうかを判断するよう従業員に求めたほか、「知的に満足できる、気取った感じではない、心の糧になるような書店」になることを望んで品ぞろえを改革していったそうです。

これらの戦略によりバーンズ&ノーブルの書籍の売れ行きは再び伸び始め、2021年の売上はパンデミック前の水準に戻り、その後も伸び続けました。読者は会社への信頼を取り戻し、店員もやる気を取り戻していったとのこと。


ジョイア氏は「バーンズ&ノーブルの再建からは、本と読者を第一に考え、それ以外のことは第二に考えるという教訓を得ることができます。これは本以外にも言えることで、音楽を売りたければその曲を愛さなければなりませんし、ジャーナリズムで成功したければその新聞を愛さなければなりません。このような愛を教えることはできなくても、見ればわかるものです。こういうことに熱中している人たちや献身的に信じている人たちを見つけて雇えばいいのです。そういう人たちこそ信頼できる人たちです」と述べました。

ソーシャルサイトのハッカーニュースではジョイア氏の指摘を受けてさまざまな意見が飛び交っており、中には「重要な洞察は、書店はもはや本を手に入れる場所ではないということだと思われます。実店舗が在庫で勝負することはもうないでしょう。Amazonに食われるだけです。しかし、私が書店に行くのは新しい本を発見するため、そして本とそれを愛する人々に囲まれている感覚を味わうためです。ドーント氏はそのことに気づき、激しく身を乗り出したのです」というコメントが見られました。

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in Posted by log1p_kr

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