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GPS衛星を使って北朝鮮のICBMを検知するシステムを有志が作成


北朝鮮は2022年11月18日に大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射し、ミサイルは北海道渡島大島の西に広がる日本の排他的経済水域内に落下しました。幸いにも人的被害は報告されていませんが、もし落下地点付近を航行中の船舶や航空機があれば被害が出る可能性もあり、日本を含むG7諸国は北朝鮮を「最も強い言葉で非難」する声明を発表しています。こうした北朝鮮のミサイル発射をGPS衛星の信号から検知する仕組みを、有志の研究者が発表しました。

A volunteer project used GPS to detect a North Korean missile test | New Scientist
https://www.newscientist.com/article/2348466-a-volunteer-project-used-gps-to-detect-a-north-korean-missile-test/

GPS衛星が発する信号でミサイルやロケットの発射を捕捉するシステムの考案者は、カリフォルニア州にあるジェームズ・マーティン不拡散研究センターのジェフリー・ルイス氏です。同氏は、「SpaceXのロケットで電離層がかく乱されている」という論文から着想を得て作ったシステムでミサイル発射を検知するとどうなるかのアニメーションをTwitterで公開しました。


ムービーを再生すると、無数の赤い点が日本列島を覆っているのが見えます。TwitterユーザーのHattrick Coil氏の説明によると、この点は日本全国に約100台ある受信機で記録された信号を示しているとのこと。


その後、朝鮮半島のあたりから黄色い点が発生して日本海の方へと波及していきました。この黄色い点が、電離層の乱れが感知されたポイントです。電離層の乱れが記録されたのは日本時間の2022年11月18日午前10時過ぎで、防衛省が発表したミサイル情報とも合致しています。


ルイス氏の依頼でこのシステムの構築に携わったサイバーセキュリティ会社・Theoriのタイラー・ナイスワンダー氏は、テキサス州にあるライス大学のマイケル・ヌート氏とともに、まず日本のGEONETシステムからデータを取得しました。

元北海道大学理学研究院の日置幸介教授によると、GEONETシステムは日本政府が所有する1300カ所の電子基準点と、ソフトバンクが運用する3000カ所の電子基準点により構成されているとのこと。

過去数十年間にわたる日置教授らの研究により、ロケットが電離層を突き抜けると排気ガスに含まれる水蒸気が電離層にある荷電粒子と相互作用して、荷電粒子が減衰することが分かりました。また、衝撃波によって押し流されることによっても荷電粒子の数は減少します。そして、荷電粒子の数が変動すると電離層を通過する電波信号の速度にわずかな変化が生じるので、複数の周波数の信号の遅延を正確に捉えることで荷電粒子の数とその時間的な変化を分析することが可能です。

この原理を応用して、ナイスワンダー氏らはGPS信号のデータから北朝鮮が発射したICBMを検知するアルゴリズムを開発しました。電離層の荷電粒子を分析するため、電離層に影響を及ぼしにくい短距離~中距離の弾道ミサイルは見逃してしまうおそれがあるものの、大型ミサイルによる電離層のかく乱は自然現象とは大きく異なるため、誤検知の可能性はかなり低いとされています。


ナイスワンダー氏は、この取り組みについて報じた科学雑誌のNewScientistに対して「これがグローバルなネットワークになったら素晴らしいことですね」とコメントしました。また、このシステムが考案される元となった研究論文の著者である台湾国立成功大学のチャールズ・リン氏は「これは非常に強力なシステムだと思いますし、SpaceXのロケットが宇宙に達するときに見られるような電離層の変化で北朝鮮のICBMを検知できたのは大変印象的です」と話しました。

オープンなデータを元に北朝鮮のICBMを捕捉することに成功した今回のプロジェクトにより、リアルタイムなデータを共有してミサイルを追跡するGPS衛星システムが構築できる可能性が示されました。もしこれが実現できれば、各国政府が軍事衛星の情報を共有するのを待つ代わりに、民間のシステムで北朝鮮のミサイル発射情報を共有することもできるようになるのではないかと、NewScientistは指摘しています。

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