サイエンス

地球環境に悪影響を及ぼしかねないレアアースの採掘を従来よりクリーン化する技術が開発される


現代社会では一般的となった電気自動車や風力発電のタービン、LED照明は環境に良いとされていますが、これらを製造する際に環境汚染を引き起こす可能性があるとされています。そこで、中国の科学者であるGaofeng Wang氏らのグループが原料となるレアアースとよばれる希土類元素を採掘する際の新たな技術として、「動電採掘」というアプローチを発表しました。

It’s electric! Technique could clean up mining of valuable rare earth elements | Science | AAAS
https://doi.org/10.1126/science.adf6050

現代で頻繁に使用されるモーターや発電機内の磁石、LEDや液晶の発光部分はレアアースに依存しており、レアアースを採掘する際には土壌や地下水を汚染する硫酸アンモニウムなどの溶出剤が必要とされています。また、廃棄物処理には広大な土地が必要となります。


世界の重レアアース(重希土類)の供給の約80%は環境規制の施行が不十分で違法採掘が一般的である中国南部およびミャンマーに隣接する地域から採掘されています。

環境汚染につながる従来の採掘方法に対して、中国科学院広州地球化学研究所のGaofeng Wang氏らは、よりクリーンな代替手段として、動電技術による採掘を考案しています。その仕組みは、大量の土壌の上部と下部にある電極が電界を誘導し、溶出剤と溶出剤が抽出するイオンの移動を高速化させるというもので、デンマーク工科大学のRiccardo Sprocati氏は「効率、環境への影響、経済性の点で従来の採掘技術をしのぐ真の可能性を秘めています」と述べています。


Gaofeng Wang氏らのグループは、実験室でのテストから始め、20kgの材料にスケールアップし、その後実際のイオン吸着型鉱床で14tの粘土の塊でテストを行いました。

これらのテストでは、従来の採掘方法よりも迅速かつ環境への影響が小さく、採掘コストは約3分の1にまで削減できると推算していますが、イギリスのレアアース専門家であるGareth Hatch氏は、この技術をスケールアップできるかどうかは「まだわからない」と述べています。


Gaofeng Wang氏らは次のテストとして主要なレアアースのサプライヤーと契約し、約2000tの土壌で動作条件の最適化を試みるとしています。

西オーストラリア大学パース校の環境エンジニアであるHenning Prommer氏は、「従来の採掘方法と同様に、動電技術による採掘も環境に影響を与えます」と指摘する一方で、「再生可能なエネルギーインフラを目指す私たちにとって、レアアースの持つ役割が極めて大きいことを考えると、採掘による環境への影響の削減は歓迎すべきことです」と述べています。

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in サイエンス, Posted by log1r_ut

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