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「PayPalの無慈悲なアカウントBAN」と戦って勝つ方法を弁護士が語る


インターネットで買い物をする際に、オンライン決済サービスのPayPalを利用しているという人は多いはず。そんなPayPalを長年利用してきたのに、ある日何の理由もなく突然アカウントを閉鎖されてしまった弁護士が、アカウントを復旧するまでに行った対策を公開しました。

I Fought The PayPal And I Won - by Yassine Meskhout
https://jessesingal.substack.com/p/i-fought-the-paypal-and-i-won

ライターであり弁護士でもあるYassine Meskhout氏のPayPalアカウントが突然停止されたのは、2018年頃のことです。Meskhout氏はこれまで14年間もPayPalを利用しており、アカウントが停止されるまで何の問題もなかったので、一体なぜそうなったのかは分かりません。

時期的には、社会問題に関する報道などでたびたび物議を醸しているジャーナリストのジェシー・シングル氏が出した本の書評を書いたタイミングと重なりますが、PayPalは「度を超えたリスクのためにアカウントが永久に制限されました」としか通知してこなかったので、これが原因かは不明です。


Meskhout氏は、電話や電子メールで繰り返しPayPalに問い合わせをしましたが、返事は決まって「利用規約に違反したから」で、具体的にどんな違反をしたのかも説明されませんでした。そこで、改めてPayPalの利用規約に目を通すことにしたMeskhout氏は、そこに仲裁に関する条項があることに気がつきました。

仲裁とは、当事者の合意に基づいて第三者の判断で紛争を解決する手続きのことで、当事者が合意してさえいれば内容はどんなものでもいいので、紛争解決の手段としてしばしば用いられます。

Meskhout氏は、この仲裁に関する条項について「PayPalの利用規約は60ページにも及ぶとんでもない長さです。とりわけ、PayPalは無料で利用できるサービスなので、普通の人はこんなものを全部読まないということをPayPalはよく知っているのです。しかし、私は普通の人ではなく弁護士でした」と記しています。


さっそく仲裁の手続きを始めたMeskhout氏は、手始めにPayPalの問い合わせフォームに異議申し立てを送りました。文面は、「私のアカウントが停止されましたが理由がわかりません。元に戻してください」というシンプルなものです。さらに、Meskhout氏は異議申し立ての内容を印刷して、配達証明付き郵便でPayPalに郵送しました。

Meskhout氏が郵送した異議申し立ては確かにPayPalの法務部門が受領しましたが、その後PayPalからは何の音沙汰もないまま利用規約で定められている猶予期間の30日間(記事作成時点では45日間)が経過しました。そこで、本格的な仲裁手続きを開始したMeskhout氏は、アメリカ仲裁協会(AAA)に対して仲裁要求書を送付しました。

利用規約では、要求の価値が1万ドル(約147万円)以下の場合は、AAAの仲裁に要する手数料や送料は全てPayPalが負担することになっています。そして、凍結されたMeskhout氏のPayPalアカウントにはお金が入っていなかったので、Meskhout氏がこの手続きで失うものは何もありませんでした。

AAAがMeskhout氏の要求書を受領してから1週間後、Meskhout氏のメールアドレスにPayPalから以下のようなメールが届きました。書かれているのは、「お客様のケースをさらに検討した結果、お客様のアカウントは現在、当社の利用規定に違反していないと判断しました。そのため、お客様のアカウントに対する制限は解除されました。お客様のご利用に心より感謝するとともに、この度のサービス停止によりご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます」というもので、ほとんど全面降伏に近い内容です。


さらに、後日PayPalの法務チームの幹部からMeskhout氏に直接、「AAAに仲裁を依頼したご要望が解決されたと理解しているので、ご連絡します。あなたは先日、当社からPayPalアカウントの制限が解除され、あなたは現在完全にアクセスできるようになったことを通知されました。そこで私たちは、あなたがAAAに連絡を取り、仲裁の要求を撤回することをお願いいたします」という連絡がありました。

思い通りの結果に気を良くしたMeskhout氏は、AAAに連絡して仲裁の要求を取り下げた上で、PayPalにこれまでの手続きで使った郵送料の16.99ドル(約2500円)を請求しました。これについてMeskhout氏は、「もっと要求してもよかったかもしれませんが、それには興味ありませんでした。16.99ドルのような些細な金額でも、PayPalという企業組織に要求を飲ませるには十分な苦痛だったことが分かれば、それで満足だったのです」とコメントしています。

その後Meskhout氏は、請求した費用を全て支払ってもらい、特に問題なくPayPalを利用し続けています。また、ジャーナリストのColin Wright氏が同じ目に遭った際には、今回Meskhout氏が行った手順をWright氏に教えて、同氏のアカウント復旧を手伝いました。Wright氏が首尾よくアカウントを取り戻せたかどうかは記事作成時点ではまだ分からないので、Meskhout氏は続報を楽しみにしているそうです。

???? @PayPal has notified me that "after a review, we have decided to permanently limit your account."

I used PayPal to receive both 1-time and recurring donations from my supporters. When I asked why, they said I needed an attorney to submit a subpoena to find out. @AskPayPal pic.twitter.com/ltHVVbJtIf

— Colin Wright (@SwipeWright)


なお、Meskhout氏は「仲裁はどんな場合でも有効な特効薬ではありません」と注意書きをしています。今回のケースはMeskhout氏の望み通りの結果に終わりましたが、偶然うまくいっただけの可能性もあるのがその理由です。他にも、企業によっては責任逃れのために形だけの仲裁条項を用意しているだけというケースも考えられます。

また、日本のPayPalユーザーが問題に遭遇した場合は、AAAではなく一般社団法人日本資金決済業協会東京弁護士会紛争解決センターが苦情などを受け付けることになっています。詳細はこのリンクからPayPalの利用規約を参照してください。

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in ネットサービス, Posted by log1l_ks

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