LSDに似た化合物が幻覚作用なしで強力な抗うつ効果と抗不安効果をもたらすことが判明
不安やうつ病に関与していると考えられている受容体「5-HT2A」を活性化させる新たな化合物を設計したと、研究者らが発表しました。同じ受容体を活性させる物質としては合成麻薬の「LSD」が知られていますが、LSDが幻覚作用を助長するのに対し、新しい化合物は抗うつ・抗不安作用を助長するそうです。
Bespoke library docking for 5-HT2A receptor agonists with antidepressant activity | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-022-05258-z.
LSD-Like Molecules Counter Depression Without the Trip | UC San Francisco
https://www.ucsf.edu/news/2022/09/423891/lsd-molecules-counter-depression-without-trip
5-HT2A受容体は、統合失調症やその他の精神疾患、不安やうつ病に関与していると考えられており、多くの抗精神病薬や抗うつ薬がその活性を阻害しています。カリフォルニア大学サンフランシスコ校のブライアン・ショイシェ氏らの研究チームは、5-HT2A受容体の活性を阻害するのではなく、LSDなどと同様に5-HT2A受容体を活性化させるアプローチの抗精神病薬を開発することを目指して研究を進めました。
5-HT2A受容体が細胞内のさまざまなシグナル伝達経路を活性化することは数十年前から知られていましたが、活性化に伴い幻覚作用などさまざまな症状が現れる場合があるとのこと。今回の研究では受容体が「幻覚作用の経路」と「抗うつ・抗不安作用の経路」という2つの異なる経路を起動させることが発見されました。さらに、ショイシェ氏らはテトラヒドロピリジンと呼ばれる化合物を5-HT2Aに最適化させ、抗うつ・抗不安作用の経路を活性化させることに成功したとのことです。
これまではそれぞれの経路の作用を確認できるほど選択性の高い化合物は存在しませんでした。近年の研究ではMDMAやシロシビンのような幻覚剤を精神療法と組み合わせて大量に投与すると、不安やうつ病などに長期的な効果をもたらすことが分かっているそうですが、副作用としてもたらされる幻覚が問題視されています。このため、よりリスクの少ない化合物の発見が求められていました。
ショイシェ氏らが設計した化合物をマウスでテストしたところ、人間の不安やうつに似た症状を改善する効果は絶大であったとのこと。また、幻覚作用の兆候である頭のけいれん反応はほとんど確認されなかったそうです。
チームの次のプロジェクトは、化合物をさらに最適化し、臨床試験で使用するのに十分な選択性を持たせることだそうです。
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