「犬は飼い主と再会するとうれし泣きの涙を流す」ことが日本の研究で判明
自宅や実家で犬を飼っている人の中には、外から帰った後や帰省した時に会った犬が、ちぎれんばかりに尻尾を振って喜んでくれた経験がある人も多いはず。しばらく会っていなかった飼い主と再会した犬の変化を観察した研究により、犬は再会により涙を流していることが分かりました。
Increase of tear volume in dogs after reunion with owners is mediated by oxytocin: Current Biology
https://doi.org/10.1016/j.cub.2022.07.031
プレスリリース:麻布大学、イヌが飼い主との再会時に情動の涙を流すことを発見 | 麻布大学
https://www.azabu-u.ac.jp/topics/2022/0823_39642.html
Dogs produce tears when reunited with owners, study finds | Animal behaviour | The Guardian
https://www.theguardian.com/science/2022/aug/22/dogs-produce-tears-when-reunited-with-owners-study-finds
麻布大学・自治医科大学・慶應義塾大学の共同研究チームによると、飼い主と久しぶりに再会した犬は飼い主を見つめる、しっぽを振る、飛び跳ねる、飼い主の顔をなめるといった友好的な態度を示すほか、愛情ホルモンと呼ばれることもあるオキシトシンの濃度も上昇するとのこと。
研究チームが、飼い主と再会した犬の様子を収めた資料として公開した映像が以下。
飼い主との再会後の犬の行動 - YouTube
6カ月の間飼い主に会っていなかったという2頭の黒い犬が、大興奮した様子で女性に飛びついています。
特に熱烈な歓迎をしているスタンダードプードルは、「こち」という名前なのだそうです。
こうした犬の様子から「飼い主と再会した犬はオキシトシンを介して涙を分泌するのではないか」との仮説を立てた研究チームは、まず飼い主と再会した犬が涙を流すのかを調べる実験を行いました。実験の対象となったのは、一般家庭で飼われている18頭の犬です。参加した飼い主と犬は5~7時間離れた後で再会し、再会から5分以内に犬が分泌した涙の量が計測されました。
その結果、飼い主と再会した犬は涙の量が増加したことが確かめられました。涙の量の増加は、他人との再会では認められず、飼い主と別れてから再会した場合にのみ有意に増加していたとのこと。これについて研究チームは、「涙液の増加は犬と特別な関係性のある飼い主との分離後の再会のように、犬の情動が激しく変化する場面において認められることがわかりました」としています。
また、オキシトシンを22頭の犬に点眼する2つ目の実験でも、犬の涙の量が増えたことが確かめられました。そこで、研究チームは次に「犬が再会時に流す涙には、人間による世話を促す効果があるのではないか」との仮説に基づき、5頭の犬に人工涙液を点眼して顔写真を撮影し、74人の被験者に点眼前の写真と見比べてもらう実験を行いました。
その結果、涙で目が潤んでいる犬の方が被験者にポジティブな印象を与えることが分かりました。具体的には、点眼をした犬の写真はそうでない写真に比べて、お世話してあげたいという人が10~15%増加したとのことです。
こうした点から研究チームは、論文の中で「犬は他の動物と異なり、人間とのコミュニケーションを通じて進化および家畜化され、アイコンタクトによる人間との高度なコミュニケーション能力を獲得してきました。その過程で、犬の涙が飼い主による保護や養育行動を引き出す役割を果たし、これによりお互いの関係が深まり、さらなる異種間の結びつきにつながった可能性があります」と結論付けました。
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