サイエンス

「イヌを飼っている住人が多い地域は犯罪率が低い」という研究結果が明らかに


イヌは人間のペットとして世界中で愛されており、飼い主にとって癒やしと活力を与えてくれる大切な存在です。新たな研究では、イヌが単に飼い主に好影響を及ぼすだけでなく、「イヌの飼い主が多い地域は犯罪率が低い」という有益な関連性があることが示されました。

Paws on the Street: Neighborhood-Level Concentration of Households with Dogs and Urban Crime | Social Forces | Oxford Academic
https://doi.org/10.1093/sf/soac059

More dogs in the neighborhood often means less crime
https://news.osu.edu/more-dogs-in-the-neighborhood-often-means-less-crime/

Dogs Could Be Lowering Crime Levels in Your Neighborhood. Seriously
https://www.sciencealert.com/dogs-may-lower-crime-levels-seriously

アメリカのノンフィクション作家で都市計画の理論家でもあるジェイン・ジェイコブズは著書「アメリカ大都市の死と生」の中で、公共の場が安全に保たれる条件として、継続的に通行人や住民の交通があり、常に彼らの視線が存在して周囲を監視していることを挙げました。

Natural surveillance(自然監視)」と呼ばれるこの理論は、長年にわたり社会学や都市計画に影響を与えてきましたが、この仮説が近隣の犯罪率低下に及ぼす影響を定量化した試みはほとんどないとのこと。その理由として、住民が近隣の街路を監視している程度を調べる有効な尺度が考えにくいという問題があります。

そこでオハイオ州立大学の社会学部博士課程に在籍するニコロ・ピンチャック氏は、「イヌの散歩」を尺度として自然監視仮説について調べる研究を行いました。「イヌの散歩は住民の監視レベルをうまく捉えているだろうと思ったことが、この研究を始めた理由の1つです」「イヌの散歩に出かけた時、出会った別の飼い主と会話をしたり、お互いのイヌをなであったりします。時にはイヌの名前を知っていても飼い主の名前は知らないこともあります」とピンチャック氏は述べています。


研究チームは、オハイオ州の都市・コロンバスに存在する595の国勢調査細分区グループにおける2014年~2016年の犯罪統計と、マーケティング企業がコロンバスの住民に「イヌを飼っているかどうか」を尋ねた2013年のデータを収集。また、論文の共著者であるオハイオ州立大学のクリストファー・ブラウニング教授が主導する「 Adolescent Health and Development in Context study(文脈における思春期の健康と発達研究)」というプロジェクトで収集した、「近隣の路上にいる人々をどれほど信頼できるか」の評価データも組み合わせて分析しました。

分析の結果、近隣住民に対する信頼度が高い地域は、信頼度が低い地域と比較して殺人・強盗・加重暴行の発生率が低いことが判明。また、相互信頼度が高い地域の中でも「イヌを飼っている世帯」が多い地域は、イヌの飼い主が少ない地域と比較してさらに犯罪率が低下することもわかりました。


具体的には、相互信頼度が高くイヌの飼い主が多い地域では、相互信頼度が高いもののイヌの飼い主が少ない地域と比較して、強盗の発生率は約3分の2、殺人の発生率は約2分の1に減少したとのこと。これは「イヌを飼っている人が増えると犯罪率が低くなる」という因果関係を証明するものではないものの、近隣住民の監視の目が犯罪率を下げるというジェイコブズの自然監視仮説を支持しています。

また、近隣で飼われているイヌの数が多いほど、住民の信頼度とは関係なく強盗などの財産犯が減少していることもわかりました。これはイヌの視線や鳴き声が犯罪者を建物から遠ざけるためだと考えられています。相互信頼とイヌによる保護効果は、近隣に住む住民の性別や年齢、社会経済的な地位など、犯罪に関連する幅広い要因を考慮した場合でも確認できたとのことです。


ピンチャック氏は、「信頼は路上で何が起こっているのか気付く人がいなければ、近隣の安全にはあまり役立ちません。それを埋めるのがイヌの散歩です」「イヌを散歩させている人々は、本質的に近所をパトロールしていると言えます。彼らは何か間違ったことが起きた時や、疑わしい部外者がいるところを目撃します。それは犯罪の抑止力になり得るのです」と述べました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「銃の所持が地域の安心安全をもたらす」というロジックは現実と相反する状況が明らかに - GIGAZINE

大気汚染の悪化は暴力犯罪の増加と相関しているとの研究結果 - GIGAZINE

「満月の夜に人は犯罪に走りやすくなる」という俗説は本当なのか? - GIGAZINE

人を殺しても罪にならない「ゾーン・オブ・デス」と呼ばれるエリアが実在する - GIGAZINE

都市の安全を作り出すために必要な「治安」とは別のあるポイントとは? - GIGAZINE

in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.