生き物

植物園に177年前から標本があった巨大なスイレンが実は「新種」だったことが判明

by RBG Kew

「新種を発見した」というニュースを聞くと、これまで人間がなかなか探査できなかった厳しい環境や、未開の奥地でひっそりと生息していたことを想像する人もいるかもしれません。ところが、新たに報告されたスイレン科オオオニバス属の新種は、イギリスのロンドンにあるキューガーデン(キュー植物園)に177年前から標本があったとして話題になっています。

Frontiers | Revised Species Delimitation in the Giant Water Lily Genus Victoria (Nymphaeaceae) Confirms a New Species and Has Implications for Its Conservation
https://doi.org/10.3389/fpls.2022.883151

Uncovering the giant waterlily: A botanical wonder of the world | Kew
https://www.kew.org/read-and-watch/new-giant-waterlily-victoria-boliviana-discovered-at-kew

A New Species of Absolutely Enormous Waterlily Has Been Hiding in Plain Sight
https://www.sciencealert.com/a-new-species-of-absolutely-enormous-waterlily-has-been-hiding-in-plain-sight

オオオニバス属は長らく、オオオニバス(Victoria amazonica)パラグアイオニバス(Victoria cruziana)の2種のみが確認されていました。ところが、キュー植物園の上級植物園芸家でありスイレンの世界的権威であるカルロス・マグダレーナ氏はさらに3番目の種があると考え、ボリビアの植物園から寄付された種子コレクションを生育し、調査を行いました。

キュー植物園で生育したスイレンの外観や種子の形の比較、DNA分析などを行った結果、ボリビアの種はこれまで知られていたオオオニバス属の2種とは異なる第3の種であることが判明。「Victoria boliviana」と命名された新種の写真がこれ。葉の直径は3mに達し、人間が余裕で横になれるほどの大きさがあります。

by RBG Kew

ボリビアの野生種はベニ県に生育しているとのこと。

by RBG Kew

1年のうち何度か花を咲かせるものの、それぞれの花は1回に1輪だけ、わずか2晩しか咲かないそうです。色は白から徐々にピンクへと変わるとのこと。

by RBG Kew

マグダレーナ氏ら研究チームが執筆した論文は2022年7月に公開されましたが、キュー植物園では過去4年間、温室の中でラベルも付けずに「Victoria boliviana」を栽培していました。植物アーティストで共著者のルーシー・スミス氏は、「何人のお客さんは、なぜこのスイレンが他のものとこれほど違っているのかと尋ねてきました。しかし、私は『まあ、これらはどれも似ていると思います』と言わざるを得ませんでした」「この素晴らしい秘密は実は目に見えるところに隠れていたのです」と述べています。

また、キュー植物園が1845年にボリビアで採取したスイレンの標本が、実は「Victoria boliviana」であることも判明しました。これまで「Victoria boliviana」の存在が知られていなかったため、標本は177年もの間オオオニバスだと思われていたとのこと。

マグダレーナ氏は「Victoria boliviana」の発見について、植物学的に見て驚くべきことだとしています。世界中で年間約2000種の植物が新種と認定されているものの、「Victoria boliviana」ほど大きなサイズの新種が見つかるのはまれだとのこと。「私たちが自然界について結局は何も知らないということを如実に表しています」と述べました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

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