B型インフルエンザウイルスのいかなる変異にも対応可能な新型ワクチンが開発される
毎年流行するインフルエンザの重症化リスクを下げるためには、インフルエンザワクチンを毎回接種する必要があります。しかし、インフルエンザウイルスの抗原性が変化するため、ワクチンの効果がきかないこともあります。ジョージア州立大学生物医学研究所の研究チームが、B型インフルエンザのさまざまな株に対応する新型ワクチンを開発したと発表しました。
Layered protein nanoparticles containing influenza B HA stalk induced sustained cross-protection against viruses spanning both viral lineages - ScienceDirect
https://doi.org/10.1016/j.biomaterials.2022.121664
Universal Influenza B Vaccine Induces Broad, Sustained Protection, Biomedical Sciences Researchers Find - Georgia State University News - Faculty, Institute for Biomedical Sciences, Press Releases, Research, University Research - Health & Wellness
https://news.gsu.edu/2022/07/08/universal-influenza-b-vaccine-induces-broad-sustained-protection-biomedical-sciences-researchers-find/
インフルエンザは毎年のように流行し、その中でも特に多いのがB型インフルエンザウイルスによるものです。研究チームによれば、臨床感染例のおよそ4分の1はB型インフルエンザウイルスによって引き起こされているとのこと。
B型インフルエンザウイルスは「山形系統」と「ビクトリア系統」の2つに分類され、ワクチンはこのどちらかあるいは両系統に対応して開発されます。しかし、流行するB型インフルエンザウイルスの表面タンパク質である「赤血球凝集素」の形状が季節によって異なるため、流行株の予想が外れるとワクチンの効果がないこともあり得ます。
そこで、研究チームが開発したワクチンが「二重層タンパク質ナノ粒子ワクチン」です。インフルエンザウイルスの表面にある赤血球凝集素は長いクギ状のタンパク質なのですが、変異するのはその先端部分であり、茎の部分は変化しません。この二重層タンパク質ナノ粒子ワクチンは赤血球凝集素の茎部分を抗原とすることで、さまざまな株に対応することができるというわけです。
by NIAID
研究チームは培養細胞とマウスでワクチンのテストを行ったとのこと。培養細胞を対象とする実験では、病原体に対する防御免疫応答を誘導するために重要な樹状細胞を活性化するために、タンパク質ナノ粒子が効果的に取り込まれることがわかったそうです。また、マウス実験では、ワクチンが動物に対して安全で生体適合性があり、さらに生分解性を持ち、免疫原性も高いことがわかりました。
論文の上級著者であるジョージア州立大学のBaozhong Wang教授は「我々は、構造安定化された抗原を組み込んだ層状タンパク質ナノ粒子が、免疫防御能と効果範囲が改善された万能インフルエンザワクチンとしての可能性を持つことを発見しました」と述べ、「私たちの次の目標は、以前から研究しているA型インフルエンザワクチンのナノ粒子を、このB型インフルエンザワクチンのナノ粒子と組み合わせ、A型インフルエンザとB型インフルエンザの両方に対応するワクチンを作成することです」と語りました。
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