職場で食事をとることがフランスで禁じられている理由とは?


昼食を神聖視する国民性を反映して、フランスでは長らく「労働者が職場で食事をとること」が法律で明示的に禁じられてきました。なぜそのような文化が誕生したのか、アメリカ放送局のNPRがその一説を紹介しています。

Drop that fork! Why eating at your desk is banned in France : NPR
https://www.npr.org/2022/06/10/1103463809/why-eating-at-your-desk-is-banned-in-france-lunch-law

フランスの労働法にあたる「Code du travail(労働法典)」という法律のR4228-19条には、「労働者が業務に割り当てられた敷地内で食事をとることを許可することは禁止」と記載されています。この法律は現代では一般に浸透しているものの、その歴史は100年ほどと浅く、施行当初は反対の声もあったそうです。

食文化の歴史を研究するマーティン・ブリューゲル氏によると、このような法律が生まれたのは「病原菌の流行」が懸念されたからだと考えられるとのこと。工業化が加速した1890年代、伝統的に家庭内で食べられていた昼食の文化が変遷を遂げ、工場などの職場に持ち込んで食べるということが労働者の中で一般的なものとなりつつありました。


しかし、ほこりや煙まみれの当時の環境で昼食を食べるのはとても衛生的とは言えず、病原菌による感染症などがはびこる事態を招いてしまったとのこと。そのため、医師たちは汚れた職場の空気をいかにきれいにするかについて議論していたそうです。

ブリューゲル氏によると、「トイレを流すように作業現場も流さなければならない」という標語があったように、職場をきれいにするためにいったん人払いをしなければならないという課題があったとのこと。そのために最適な時間が、人々が昼食をとっている時だったのです。


政府はこのような状況を受け、1894年に「職場での昼食を禁止する」という法律を制定。これにより労働者を職場の外に連れ出し、窓を開けて職場環境を一度清潔にするという作業が始まりました。

ただし、この法律が施行された後には「路上での女性へのハラスメント」が発生するなどの問題もありました。「外で食事をするのはみっともない」という考え方から、職場で食事をする権利を求めて女性たちがストライキを起こしたことも伝えられています。

しかし、議員たちは労働者の安全を重視してこの法律を残すよう主張。そして数十年かけて、公衆衛生令が要求する職場外での昼食は、次第にフランス文化の大切な一部となっていきました。今では職場のドアが閉まり、ビストロやレストランが昼休みの常連客でにぎわうのは、当たり前の光景になっており、仕事と昼食を切り離すことはほとんど神聖なこととみなされています。


一方でこの法律は厳しく守られているわけでもないそうで、ニュースサイトのThe Local Franceは「フランスでは年々、短時間でさっとランチを食べたりサンドイッチで手軽に済ませたりすることが一般的になってきているので、フランス人労働者の中にはオフィスでの食事を禁止する法律が実在することに驚く人もいたようです」と報告しています。

2021年には新型コロナウイルス感染症の影響で、一時的に職場での食事が許可されたこともありましたが、2022年に入り元に戻っています。ブリューゲル氏は「昼休みは健康状態の改善につながります。また、一緒に食事をすることで問題点について話し合うことができ、緊張感や異なる意見を解決することができ、異なる視点を持つことが可能な文化が生まれるのです」と述べました。

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in , Posted by log1p_kr

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