体の動きを電気に変える布「ファブリック」が開発される
シンガポールの南洋理工大学の研究チームが、体の動きから発生するエネルギーを電気に変える生地「ファブリック」を開発したと発表しました。ファブリックはゴムのような伸縮性と防水性、通気性があり、たたいたりこすれたりすると電気を発生する素材で、ウェアラブルデバイスの開発への応用が期待されます。
Stretchable, Breathable, and Stable Lead‐Free Perovskite/Polymer Nanofiber Composite for Hybrid Triboelectric and Piezoelectric Energy Harvesting - Jiang - 2022 - Advanced Materials - Wiley Online Library
https://doi.org/10.1002/adma.202200042
Scientists develop a 'fabric' that turns body movement into electricity: 'Fabric' could one day be integrated into clothes or wearable electronics to power devices on the go -- ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2022/06/220603100146.htm
ファブリックがどんな生地なのかは、以下のムービーをみるとわかります。
New ‘fabric’ by NTU Singapore scientists turns body movement into electricity - YouTube
ファブリックを開発した南洋理工大学の研究チーム
ファブリックはナノファイバーの布で、太陽電池などに用いられる「非鉛ペロブスカイト」と、折り曲げたり伸ばしたりすると電荷が発生する「ポリフッ化ビニリデン-コ-ヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HPF)」の2つが主成分です。さらに銀と水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)を使って、生地の伸縮性と防水性を維持しながら電極をプリントしています。
ファブリックにオシロスコープを接続し、ファブリックを手のひらでたたいて衝撃を与えると、確かに起電しているのがわかります。研究チームによると、1平方メートルあたり2.34ワットの発電が確認できたとのこと。
LED100個を搭載した基板に接続したファビリックをたたくと……
たたく度にLEDが点滅します。
ファブリックは伸縮性に優れ……
耐水性もあるので、そのまま洗濯もできてしまうとのこと。
ファブリックは非常に軟らかいので、服に組み込んだり、体に取り付けたりすることができます。
例えばトレーニング用ウェアに組み込めば、ウェアラブルデバイスの電源として利用したり……
スマートフォンのバッテリー充電に使えたりといった応用が期待されます。
研究チームをリードする南洋理工大学のLee Pooi See教授は「バッテリー容量が向上し、電力需要が減少しているにもかかわらず、ウェアラブルデバイスの電源には依然として頻繁なバッテリー交換が必要です。ファブリックは人間からの振動エネルギーを利用して、バッテリーの持ちを延ばすことができ,さらには自己動力システムを構築できることを示しました。これは、非鉛ペロブスカイトをベースとしたハイブリッド型エネルギーデバイスとしては初めてのもので、安定性・伸縮性・通気性・防水性を備え、同時に優れた電気出力性能を発揮します」とコメントしました。
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