「宇宙と空の境界線はどこにあるの?」を専門家が解説
「地表と宇宙は壁や膜で仕切られずにつながっている」ということをよく考えると、空恐ろしくなってくる人もいるはず。致命的な宇宙放射線からの保護や水の循環など、地球の大気は生命にとって重要な役割を果たしていますが、地球のサイズからすればほんの薄皮のような厚さしかありません。そんな地球の空は一体どこまでで、どこからが宇宙なのかという素朴な疑問について、大気や宇宙の専門家が解説しています。
Where does Earth end and outer space begin? | Live Science
https://www.livescience.com/where-earth-atmosphere-ends
アリゾナ州立大学の宇宙物理学者であるカトリーナ・ボサート氏によると、大気の密度は地球から遠くなるにつれて低くなり、組成も変化して軽い原子や分子が支配的になるとのこと。
大気の密度が低くなると気圧が下がるので、飛行機の高度が急激に変わると耳や鼻をつないでいる細い管である耳管にも影響が現れます。カリフォルニア大学デービス校で大気科学を教えているマシュー・アイゲル氏は、科学系ニュースサイトのLive Scienceに対し「飛行機が離陸する時に耳が痛くなることがあるのは、この気圧の変化によるものです」と話しました。
高度が上がり、空気がどんどん薄くなると、普通の飛行機では揚力が得られず飛べなくなります。ボサート氏やアイゲル氏らは、この飛行機が飛べなくなる境目が地球の大気の終わりであり、また宇宙の始まりだと考えています。
具体的にどの高さになると飛行機が飛べなくなるのかは、さまざまな条件によって変わってきますが、航空分野に関する多くの機関は便宜上、高度100kmのカーマン・ラインを基準としています。これは、ハンガリー出身の航空工学者であるセオドア・フォン・カルマン(英語読みするとカーマン)の名前にちなんだものとのこと。とはいえ、カーマン・ラインは物理的なものではないので、もし誰かが高度100kmに達しても特に何も変化せず、カーマン・ラインに気づくこともないだろうと、アイゲル氏は話しました。
高度100kmという高さは単にきりがいいだけでなく、工学的な意味もあります。ボサート氏によると、カーマン・ラインは、人工衛星が燃え尽きたり軌道から外れたりしてしまうことなく、地球を最低でも1周できるおおよその領域とのこと。もちろん、人工衛星は地球を1周するだけではないので、地球低軌道という最も低い領域を周回する人工衛星でも高度160km以上~1000km以下の場所を飛んでいますが、地球の上層の大気による抵抗で速度が落ちるので、数年もすれば軌道から外れてしまうそうです。
では、「高度1000kmを超えると大気がなくなるのか?」というと、そうでもありません。ボサート氏は「地球の大気の痕跡がなくなるには、それよりもさらに何万kmも先までいかなくてはなりません。地球の大気の最も外側、つまりジオコロナを形成する水素原子は、月よりも外側に広がることもあります」と指摘しています。
飛行機は100kmまでしか飛べませんが、機内が与圧されていない飛行機に乗っている人間や空を飛ぶ鳥は、もっと早くに限界に達します。高い山に登ると水が100度よりも低い温度で沸騰することが知られている通り、気圧が低くなると水が気体になる温度も下がっていき、やがて体温でも沸騰するようになってしまうからです。
これについてアイゲル氏は、「原理的には動物でもカーマン・ラインまで行けますが、実際のところ動物は肺の中の液体が沸騰するほど気圧が低くなる地上約20kmの『アームストロング限界(Armstrong limit)』を超える高度では生存できません」と話しました。
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