Amazonの配達請負ドライバーの負傷率が18%超と業界水準よりもはるかに高いことが明らかに
Amazonは同社の配達業務を行うドライバーについて「業界平均よりも安全」と主張してきましたが、実際には配達請負業者のドライバーは、Amazon正規の配達ドライバーや倉庫作業員よりも負傷しやすい状況で働いている可能性が高いことが、アメリカ労働省の一機関である労働安全衛生庁(OSHA)と労働環境を改善するための非営利団体である「Strategic Organizing Center(SOC)」が公開したレポートにより明らかになりました。
PRODUCTION PRESSURE AND THE INJURY CRISIS IN AMAZON’S DELIVERY SYSTEM
(PDFファイル)https://thesoc.org/wp-content/uploads/2022/05/The-Worst-Mile.pdf
Amazon Third-Party Delivery Driver Injuries Increased 40% in 2021, According to Report
https://www.vice.com/en/article/epxj4z/amazon-third-party-delivery-driver-injuries-increased-40-percent-in-2021-according-to-report
Amazonは複数の企業と商品配達に関する契約を結んでおり、同社と契約を結ぶ配達請負業者はデリバリーサービスパートナー(DSP)と呼ばれます。AmazonはDSPの起業をサポートするなどして配達請負業者との関係を構築してきましたが、DSPには厳格な監視が行われていることが問題視されており、一部の配達ドライバーからは「Amazonによるドライバーへの厳しいノルマが危険な作業環境を作り出している」という声が上がっています。
これを裏付けるようなデータが、今回公開されたレポートです。DSPに関するデータをAmazonの正規従業員と比較し分析することは非常に困難で、その理由は各DSPが別個の企業として成り立っているためです。そこで、レポートでは2021年にOSHAに傷害データを提出した201件のDSPと、Amazonの正規従業員の負傷率を比較。なお、調査対象となったDSPは201件ですが、これはアメリカに存在するDSPのおよそ10%に相当するそうです。
以下のグラフはDSP・Delivery Stations(デリバリーセンター:Amazonの配送拠点)・Sortation Centers(仕分けセンター)ごとの労働者の負傷率をまとめたもの。赤色が「Lost Time(休業せざるを得ないほどの負傷)」、白色が「Light Duty(軽作業に移行せざるを得ない程度の負傷)」、黒色が「Other(その他の負傷)」を表しています。分析の結果、2021年におけるDSPの負傷率は前年比で38%増の18.3%、デリバリーセンターの負傷率は前年比で14%増の10.9%。仕分けセンターでの負傷率は前年比で22%増の5.6%です。
さらに、DSPの負傷率(左)、DSP以外のAmazonの荷物を配達するドライバーの負傷率(中央)、Amazon以外の配達ドライバーの負傷率(右)をまとめたグラフが以下。数字を比較するとAmazon関連の配達ドライバーの負傷率はAmazon以外の配達ドライバーよりも高く、DSPの負傷率はさらに高くなっています。
レポートには「AmazonはDSPと従業員を広範囲に制御できるようにDSPプログラムを設計しましたが、その厳しい配達要求は人的被害に対する責任を回避しています」と記されており、Amazonが配達ドライバーに求めるノルマが高すぎることが指摘されています。
なお、Amazonの広報担当者であるケリー・ナンテル氏はMotherboardに対して「安全性はネットワーク全体の優先事項です。そのため、事故率を全体で50%近く削減するのに役立つような革新的なカメラシステムなどのテクノロジーを展開することで、新しい安全ツールへの投資を試みており、これにより日々数字は改善されています」と語っています。
なお、Amazonの配達ドライバーだけでなく倉庫作業員も業界平均と比べると負傷率が高いことが明らかになっています。
Amazonの従業員は競合他社よりもはるかに頻繁に負傷しているというデータ - GIGAZINE
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