人は「格差が解消されると自分は損をする」と誤解することが判明、絶対的な豊かさより人と比べて裕福なことを重視
ほとんどの人は、「平等と不平等、どちらが正しいですか?」と尋ねられれば平等な方がいいと答えるはず。しかし、政府や企業が平等の実現や不平等の撲滅のために提案する取り組みは、必ずしも歓迎されません。こうした矛盾の裏には、有利な立場にある人が平等そのものを否定的に捉え、格差が自分たちに利益をもたらしてくれると勘違いする傾向があることが、新たな研究により判明しました。
If you rise, I fall: Equality is prevented by the misperception that it harms advantaged groups
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abm2385
Despite ideals, people don't really like reducing inequality, study finds
https://phys.org/news/2022-05-ideals-people-dont-inequality.html
過去に行われた研究では、人種的不平等がアメリカ経済に16兆ドル(約2100兆円)もの損失を与えていることや、根強い男女間の賃金格差が世界経済にもたらす不利益は約160兆ドル(約2京1000兆円)に及ぶことなどが分かっています。
「不平等がこれほど有害にもかかわらず、社会から格差が一向になくならないのは、有利な立場の人々が『平等は損』だと誤認識していしているからではないか」と考えたカリフォルニア大学バークレー校のDrew Jacoby-Senghor氏らの研究チームは、格差を是正する政策の影響などを尋ねる実験を行いました。
一般にアメリカ社会で有利とされる、非ヒスパニック系白人を中心としたアメリカ人4197人が参加した合計9つの実験には、格差を解消しても有利な立場の人々が損をしない政策や、不平等の是正によりあらゆる立場の人が利益を得るような政策をテーマとしたものが含まれていました。
例えばある実験では、非ラテン系の白人の参加者らに「2018年、白人の住宅購入者は銀行から多額の住宅ローンを受け取りましたが、ラテン系の住宅購入者にはごくわずかな住宅ローンしか提供されませんでした」とのレポートを読んでもらった上で、「白人向けの融資額を維持したままラテン系の人々への融資を減らしたり増やしたりする政策は、白人の住宅購入者に影響を与えると思いますか?」と質問しました。
白人向けの融資額は維持されるので、ラテン系の住宅購入者への融資が増えようが減ろうが白人の住宅購入者には直接的な関係はありませんが、参加者らは「ラテン系の人々への融資額が増えると白人向けの融資が減ってしまう」と勝手に誤解してしまったとのこと。この誤認識は、白人とラテン系の住宅購入者の両方に利益がもたらされるようなWin-Winの政策の場合でも同様でした。
Jacoby-Senghor氏はこの結果について、「格差の原因と解決策は複雑ですが、それを誰もがよりよい生活を送れるようなものに単純化しても、人々は自分が損をすると勘違いし続けました」「私たちの実験の中では、他人に比べてどれだけ裕福かの方が、絶対的な豊かさよりも重要視されました。人々は、明らかに自分たちが利益を得る場合でさえ、相対的な優位性の損失を絶対的な損失とみなすのです」と話しました。
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