サイエンス

「お尻から侵入して全身の皮下をうごめく大量の寄生線虫」が報告される


スペインの医師が「大量の寄生線虫がお尻から侵入し、皮下を移動して全身にまわった」という症例を報告しました。

Larva Currens in Strongyloides Hyperinfection Syndrome | NEJM
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm2115708

Army of worm larvae hatch from man’s bum, visibly slither under his skin | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2022/04/army-of-worm-larvae-hatch-from-mans-bum-visibly-slither-under-his-skin/

問題の症例は、スペインのMario Puerta-Peña氏らが査読制医学雑誌のNew England Journal of Medicineで報告したストロンギロイデス・ステルコラリス(糞線虫)という線虫に関するもの。ストロンギロイデス・ステルコラリスは幼虫時代に汚染された土壌・下水と接触した生物の皮膚を食い破って体内に侵入し、血流やリンパ流などに乗って心臓を経由して肺に移動します。続いて肺胞内から気管をさかのぼって口内にまで移動し、そこから感染者に飲み込まれる形で腸に移動。そして腸内で成長・繁殖し、糞便とともに体外に出て感染を広めるというのがこの線虫の生態です。


今回報告されたのは、糞便とともに出て行ったストロンギロイデス・ステルコラリスが肛門周辺の皮膚から「再侵入」してきたという珍しい症例。患者は以前から転移性肺ガンという診断を受けていた64歳の下水工事業従事者で、ストロンギロイデス・ステルコラリスに感染した後にガン用のホルモン療法薬の投与を受けた結果、免疫反応が抑制されてストロンギロイデス・ステルコラリスが繁殖しやすい体内環境が整ってしまったと考えられています。

以下が実際の患者の画像。赤い部分が皮下をうごめくストロンギロイデス・ステルコラリスとのことですが、ストロンギロイデス・ステルコラリスはかゆみを伴うそうなので、患者が引っかいた傷跡も混じっていると考えられます。


Puerta-Peña氏らが皮下のストロンギロイデス・ステルコラリスをペンでわかりやすくしたのが以下の2枚。左右の画像に写っているストロンギロイデス・ステルコラリスは同じ個体で、左側の画像の位置から右側の画像の位置まで24時間で移動したとのこと。


報告によると、Puerta-Peña氏らは赤い湿疹が移動していたことから寄生虫だと判断し、検便によってストロンギロイデス・ステルコラリスの幼虫を確認して診断を確定させたとのこと。この診断結果を受けてPuerta-Peña氏らは患者に抗寄生虫薬のイベルメクチンを投与し、発疹と下痢を治療したそうです。

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in サイエンス,   生き物, Posted by darkhorse_log

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