イヌイットが寒さに強い理由とは?
カナダ北部など極寒地帯に暮らすイヌイットは、何らかの形で寒さに適応してきたと考えられてきました。2016年に発表された研究では、イヌイットが「特定の体脂肪から熱を生産させる遺伝子」を旧人類から受け継いでいたことが判明しています。
Archaic Adaptive Introgression in TBX15/WARS2 | Molecular Biology and Evolution | Oxford Academic
https://doi.org/10.1093/molbev/msw283
Arctic Inuit, Native American Adaptations to Cold and Body Fat Distribution May Originate from Extinct Ancient Hominid Interbreeding | Molecular Biology and Evolution | Oxford Academic
https://doi.org/10.1093/molbev/msw300
イヌイットは冬には氷点下30度になることもある極寒地帯で暮らしています。このような低気温で生存するために、イヌイットは寒さに適応する進化を遂げてきたと考えられてきました。この仮説を検証するべくカリフォルニア大学バークレー校の研究チームはイヌイットの遺伝情報をネアンデルタール人やデニソワ人といった旧人類の遺伝子と比較しました。
調査の結果、特定の体脂肪からの熱産生に関わっていることが知られている「WARS2」と「TBX15」という遺伝子がデニソワ人からイヌイットへ受け継がれた可能性が示されました。加えて、TBX15はイヌイットだけでなくネイティブ・アメリカンの集団からも高頻度で検出され、アフリカの集団からは検出されなかったとのこと。研究チームはこの結果から「ホモ・サピエンスがシベリアからベーリング海峡を越えてアメリカ大陸へと拡大する際に、TBX15が重要な役割を果たした」と推測しています。
なお、研究チームはチベットに住む人々の「標高の高い地域への適応」にデニソワ人から受け継いだ遺伝子「EPAS1」が関わっていることを突き止めており、今後もホモ・サピエンスがデニソワ人から受け継いだ環境適応遺伝子が発見される可能性があります。
Altitude adaptation in Tibetans caused by introgression of Denisovan-like DNA | Nature
https://doi.org/10.1038/nature13408
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