DeepMindの碑文解読AI「Ithaca」で失われた碑文を72%の精度で復元することに成功
Googleの親会社・Alphabet傘下のAI企業であるDeepMindが開発した碑文解読AIにより、断片化していてとても読めない古代ギリシャの碑文を最大72%の精度で復元できたとの論文が発表されました。碑文の内容だけでなく、それが書かれた年代や地域まで高い精度で推測できるAIにより、古代文明への理解が進むと期待されています。
Restoring and attributing ancient texts using deep neural networks | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-022-04448-z
DeepMind’s new AI model helps decipher, date, and locate ancient inscriptions - The Verge
https://www.theverge.com/2022/3/9/22968773/ai-machine-learning-ancient-inscriptions-texts-deepmind-ithaca-model
古代人が残した碑文は考古学的に大変重要な資料ですが、それらの多くは長い歳月の間に砕けてバラバラになったり風化したりして判読できません。また、石碑や粘土板といった無機物は放射性炭素年代測定などで分析することができないので、いつごろの年代に作成されたかの推測も困難です。
断片化した碑文を解読するため、考古学者は類似した碑文と比較して文字や文章の流れを類推しますが、人間が膨大な考古学データをすべて理解し、そこからパターンを見つけ出すのは至難の業となります。
そこで、DeepMindのAI研究者であるYannis Assael氏らの研究チームは、古代ギリシャの碑文7万8608件からなるデータセットでAIをトレーニングし、古代ギリシャ人が残した碑文の文章や年代、起源を推測できるようにしました。
「Ithaca」と名付けられたこのAIは、単体でも62%の精度で破損した碑文を復元することに成功。考古学者がIthacaを使って解読をした結果、精度は72%に向上しました。また、Ithacaに由来が分かっている碑文を示したところ、その碑文が執筆された年代を平均して30年の誤差で推定することができたほか、どこで書かれたのかも71%の確率で特定することができたとのことです。
論文の共著者であるヴェネツィア大学のThea Sommerschield氏は、「Ithacaは今回解読に挑戦した古代ギリシャ語のようなラテン語系の資料だけでなく、マヤ語、くさび形文字、パピルスなどあらゆる古代文字に対応できるよう設計されています」と述べて、Ithacaの真価は精度だけでなく柔軟性にもある点を強調しました。
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