サイエンス

AIが古代バビロニアのテキストを解読、ギルガメシュ叙事詩のコピーや失われた賛歌を発見


古代の破損した碑文や読み解くのが難しい古代文字の解読をAIが処理することで、専門家が数時間かける作業をものの数秒でこなすことができます。ドイツのルートヴィヒ・マクシミリアン大学(LMU)の研究チームは、「Fragmentarium」というAIが複雑な楔形(くさびがた)文字である古代バビロニアのテキストを読み解いて、美しい賛歌を発見したと報告しています。

Spiel mit dem Anfang der Weltliteratur - LMU München
https://www.lmu.de/de/newsroom/newsuebersicht/news/spiel-mit-dem-anfang-der-weltliteratur.html

AI Deciphers Ancient Babylonian Texts And Finds Beautiful Lost Hymn | IFLScience
https://www.iflscience.com/ai-deciphers-ancient-babylonian-texts-and-finds-beautiful-lost-hymn-67428

古代人が残した碑文は、長い歳月の間に砕けてバラバラになったり風化したりして、判読が難しい場合があります。Googleの親会社・Alphabet傘下のAI企業であるDeepMindが開発した碑文解読AI「Ithaca」は断片化して読めない古代ギリシャの碑文を最大72%の精度で復元できたり、専門家が2時間かける抜け落ちた記述の修復をAIは数秒で行ったりと、考古学の分野でAIアルゴリズムを役立てています。

DeepMindの碑文解読AI「Ithaca」で失われた碑文を72%の精度で復元することに成功 - GIGAZINE


同様に、古代バビロニアの楔形文字の解読をAIで行う「電子バビロニア文学プロジェクト」がLMUの研究チームが主導して行われています。古代バビロニア文字は粘土板に書かれており、現在では無数の断片が残っているのみであるため復元に時間がかかるほか、テキストはシュメール語とアッカド語の2つの複雑な初期体系で書かれているため、解読はかなり困難とされています。4000年以上前の有名な文学「ギルガメシュ叙事詩」は、19世紀に再発見されて以来3分の2が判読できているのみとなっています。

LMUの研究所で古代近東文学の教授を務めるエンリケ・ヒメネス氏は、2018年から現存するすべての楔形文字のデジタル化に取り組んでおり、2023年までに2万2000件近いテキストの断片を処理してきたそうです。テキストの断片を体系的かつ自動的に組み立てていくことができるこのデータベースは「Fragmentarium」と名付けられ、将来的には楔形文字の写真を認識して書き写すことができるようになることが期待されています。LMUの発表では、Fragmentariumを「バビロニア文学の再構築に不可欠であると信じており、現在ではこの再構築をはるかに迅速に進めることができます」と表現しています。


まだ解明されていない個々の断片をつなげるために、LMUの研究チームはアルゴリズムを学習しています。すでに数百の写本と多くのテキスト上の関連性を確認しており、2022年11月には、ギルガメシュ叙事詩の最新の年代である紀元前130年の石版に属する断片を認識したとのこと。ヒメネス氏は「これは、最も古いバージョンとして知られるものから数千年経過したものです。これほど後期にまでギルガメシュの模写が行われていたことは、非常に興味深いことです」述べています。

ヒメネス氏はこのプロジェクトで新しいテキストやテキストの作者を見つけただけでなく、これまで知られていなかったジャンルも発見しています。その中の一つが「バビロンの街への賛歌」のテキストで、ヒメネス氏はこの発見について「今までバビロニアの文献には、都市への賛歌は発見されていませんでした。今回、その断片を新たに15個発見し、Fragmentariumで解読しました。Fragmentariumがなければ、復元に30年から40年はかかっていたと思います」と説明しています。ヒメネス氏によると、賛歌はバビロンに春が訪れる様子を描いた、とても生き生きとしたものであるそうです。LMUが公開した賛歌の内容は以下のようになっています。

アラトゥ川
知恵の主ヌディムドによって創造された
平原に水を注ぎ、葦を濡らし、
その水をラグーンと海に注ぐ。
彼の牧草地には緑が咲き乱れ、
畑は新鮮な穀物で輝きます。
彼のおかげで穀物は山積みになり、
草は群れの牧草地として高く育ち、
人類にふさわしい富と素晴らしさをもって、
すべては輝かしい豊かさで覆われています。


Fragmentariumのプラットフォームは、世界中の学者がアクセスできるようになっており、さまざまなプロジェクトに活用されています。また2023年2月には、LMUの研究者がFragmentariumを一般にも公開し、初めてデータベースに基づく古代バビロニア文字のデジタル版を発行する予定となっています。ヒメネス氏は「まだ確認されていない断片が何千個もあります。Fragmentariumを使って、誰もが調査を楽しめるようになります」と語っています。

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in サイエンス, Posted by log1e_dh

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