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ゲーム版YouTube「Roblox」は児童搾取によって成り立っているとの指摘

by Pioneer Library System

自分でゲームを作って公開し、収益化もできることから「ゲーム版YouTube」と呼ばれることもある世界最大級のゲームプラットフォーム・Robloxには、子どもが作ったゲームから利益を巻き上げる搾取構造があると、イギリスの大手紙・The Guardianが報じています。

The trouble with Roblox, the video game empire built on child labour | Games | The Guardian
https://www.theguardian.com/games/2022/jan/09/the-trouble-with-roblox-the-video-game-empire-built-on-child-labour

The Guardianの取材に応じたアンナさん(仮名)がRobloxでゲーム作りを始めたのは、10歳の頃でした。段ボールやマーカーでお城を作るような感覚でゲーム作りに挑戦したアンナさんは、自分が作ったゲームが世界中の子どもにプレイしてもらえるRobloxにすぐに夢中になり、家にいる間はずっとPCにかじりついてRobloxでゲームを作るようになったとのこと。

こうした活動が実を結び、アンナさんは16歳のころにRobloxで活躍する20代のゲーム制作者の目に留まりました。そして、収益の10%をシェアするという約束で新作ゲームのアートワークやデザイン、プログラミングを担当したところ、ゲームはRoblox上で大ヒット。両親の給料の合計を上回る月収を得たアンナさんは、大学進学をやめてゲーム制作を仕事にする道を選びました。


2006年にリリースされたRobloxは当時、無名の教育用ソフトに過ぎませんでした。というのも、Robloxで作られたゲームの大半は素人っぽい荒削りなゲームばかりだったので、大人の関心を引くものではなかったからです。しかし、大量のゲームを無料で遊んだり自作ゲームを公開したりできるRobloxは10代前半の子どもを中心とした若者から大きな支持を受け、Robloxはすぐにアメリカの子どもの半分以上がアカウントを持つほど大きなゲームプラットフォームに成長しました。

特に、自作のアバターでさまざまなゲームをプレイできるというRobloxの機能は、子どもたちの心をわしづかみにしたとのこと。この機能について、The Guardianは「例えばマリオがFIFAシリーズCall of Dutyシリーズの世界で活躍するような、何千もの異なるゲームが同じ世界の一部であるかのように感じられる機能」と述べています。

当初は金銭的なインセンティブをほとんど持たないRobloxでしたが、成功を受けて「若いゲームクリエイターがお金を稼げる場所」と宣伝する方針に大きくかじを切り、ユーザーにRobloxのアバター用コスチュームやアクセサリーを作って販売するよう呼びかけました。ゲーム内でほかのユーザーが作ったアイテムは、「Robux」というプラットフォーム内通貨で売買することが可能で、アイテムが売れるとRobloxが約30%の手数料を取った残りが制作者と販売者に分配される仕組みになっているとのこと。Robloxの公式サイトには一時期、「Make Anything. Reach Millions. Earn Serious Cash.(何かを作ろう。ミリオンに手を伸ばそう。多額の現金を手に入れよう)」というスローガンまで掲げられていたそうです。

新型コロナウイルスのパンデミックを追い風に急成長したRobloxは、2021年3月に時価総額4兆円超で株式市場に上場し、ほぼ無名の会社から一躍して任天堂やActivision Blizzardと並ぶ企業価値を持つ巨大企業になりました。しかし、Robloxの収益の大半は子どもが作ったゲームやアイテムによるものであることから、The GuardianはRobloxについて「Robloxは、仮想のブーツや帽子の売り上げによって築かれた帝国であり、ユーザーのほぼ半数が13歳以下であることを考えると、その帝国は子どもの創造性と労働力で成り立っていることが分かります」と指摘しています。


苦労して作ったゲームが多くのプレイヤーに評価され、金銭によって報われることは悪いことではありませんが、子どもやクリエイターを保護する仕組みが不十分なRobloxには問題も多く、その中には長時間労働の強要や性的ないやがらせなども含まれています。Robloxは、クリエイター向けの教育プログラムを公開していますが、それらは面白いゲームを作るためのものでノウハウを提供するものではないので、経験もなく年齢的にも未熟な子どもが明確な計画もないまま集まって1つのものを作る上では、衝突や問題の発生が避けられません。

The Guardianの取材によると、Robloxが2021年にクリエイターに支払った報酬の合計額は5億ドル(約575億円)に上りますが、同年中に3万ドル(約345万円)以上の収益を上げたゲームは約1000本に過ぎないとのこと。つまり、Robloxで公開されている2700万本以上のゲームのほとんどはまとまった収益に結びついていないことになります。


前述のアンナさんが就職したゲーム制作会社も、規模が大きくなりすぎて瞬く間に財政が崩壊し、ゲーム作りに参加していた若者を「契約社員扱いに変更する」と発表しました。その結果、アンナさんの給料は激減してしまったので、アンナさんはすぐに同僚とともにゲーム制作会社を退職しました。しかし、会社の創業者はRobloxで力がある人物なので、アンナさんは誰にも相談できずにいるとのこと。そして、自分が手がけたゲームがRobloxの成功例としてもてはやされるのを見るたびに、悔しい気持ちで一杯になるのだそうです。

アンナさんは、The Guardianに「もし私が置かれている状況をRobloxのフォーラムに投稿したら、荒らしとして片付けられてしまうでしょう。Robloxでのゲーム制作を続けたいので、開発者コミュニティの中で名声のある人たちにたてつくことはできないんです」と吐露しています。


なお、大学進学を蹴ってまで就職したゲーム制作会社を後にしたアンナさんは、改めてコンピューターサイエンスを学ぶために大学に入り直したとのこと。しかし、授業の内容が初歩的すぎることと、高収入だったころが忘れられなかったことが原因で、1学期もたたずに退学してしまいました。そして、貯金を切り崩しながら新しいRobloxゲームの制作に打ち込んでいますが、なかなか成果は出ていないそうです。

アンナさんは近況と今後について、「新作のほとんどは失敗作でした。最近やっと、Robloxとの関係がいかに有害か、何年分の人生を無駄にしてしまったかに気づきました。もし、いま取り組んでいるプロジェクトが成功するといったチャンスに恵まれたら、今度こそRobloxから手を引くかもしれません」と話しました。

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in ゲーム, Posted by log1l_ks

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