サイエンス

エジプト中王国時代の遺跡から「入れ子構造になった豪華な棺」に納められた巫女のミイラが発見される

by Jochem Kahl, The Asyut Project.

2024年8月~9月にかけてエジプトのアシュートで行われた遺跡の発掘調査により、エジプト中王国時代の地方知事(ノマルコス)の娘である女性のミイラが発見されました。このミイラは入れ子構造になった2つの棺(ひつぎ)の中に、多数の副葬品と共に埋葬されていたとのことです。



Bestattung der altägyptischen Dame Idy in Assiut gefunden • Ägyptologie • Fachbereich Geschichts- und Kulturwissenschaften
https://www.geschkult.fu-berlin.de/e/aegyptologie/aktuelles/Grab-der-Idy.html

'Extraordinary' burial of ancient Egyptian governor's daughter discovered in a coffin within another coffin | Live Science
https://www.livescience.com/archaeology/ancient-egyptians/extraordinary-burial-of-ancient-egyptian-governors-daughter-discovered-in-a-coffin-within-another-coffin

'Extraordinary' burial chamber of an ancient Egyptian priestess is discovered after 4,000 years - as archaeologists uncover a coffin WITHIN another coffin | Daily Mail Online
https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-14048371/burial-chamber-ancient-Egyptian-priestess-coffin.html

ドイツのベルリン自由大学はエジプトのソハーグ大学などと共同で、2024年8月18日~9月17日にかけてアシュートにあるネクロポリスの発掘調査を行いました。

この調査では、紀元前1971~1926年に在位したエジプト第12王朝のファラオ・センウセレト1世の下でアシュートのノマルコスを務めていた人物・Djefaihapi(ジェファイハピ)の墓が調査されました。

ジェファイハピの墓は紀元前1880年頃に作られ、岩をくりぬいた高さ11m・深さ28m・幅70mの部屋があることで知られています。今回の発掘調査により、ジェファイハピの一人娘である「Idy(イディ)」のミイラが埋葬された棺が発見されました。

以下の写真が、深さ14mの側室で発見されたイディの棺です。イディの棺は入れ子構造になっており、長さ2.62mの棺の中に、少し小さい長さ2.03mの棺が収められていたとのこと。


棺がよく見えるようにした写真がこれ。


遠目だと入れ子構造になっていることがわかりにくいですが、よく見ると大きな棺の内壁にぴったりくっつくように、小さな棺が入っていることがわかります。これらの棺はいずれも木製で、エジプト国外から供給された木材で作られているとのこと。


棺の表面は、以下のような美しい文字や絵で装飾されており、これらは「死後の世界における故人の旅」を説明するものだと考えられています。ベルリン自由大学のエジプト学者であり、今回の発掘調査を主導したヨッヘム・カール博士は今回の発見について、美学的にも科学的にも並外れたものだと評しました。


イディはエジプト神話に登場する愛と美の女神・ハトホルに仕えた巫女(みこ)であり、ミイラの分析からは片足に先天的な欠損があったこと、40歳になる前に亡くなった可能性が高いことなどがわかっています。

イディと共に埋葬された宝石や金属品は、おそらく数千年前に侵入した略奪者によって盗まれていたものの、短剣や木製の女性像といった副葬品は残されていました。また、供物としてささげられた食物が入った容器や、ミイラを作る際に取り除かれた内臓が入った容器も見つかったと報告されています。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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