トルネードで倒壊したAmazon倉庫の従業員はシェルターではなく「トイレ」に避難させられていた
2021年12月10日に、アメリカの中西部から南部にかけての地域で発生したトルネードにより、イリノイ州・エドワーズビルのAmazon倉庫が倒壊し、6人の従業員が亡くなりました。その後の報道により、問題のAmazon倉庫では従業員がシェルターではなくトイレに避難するよう指示されていたことや、建屋自体が竜巻に弱い工法で建設されたものだったことなどが明らかになっています。
OSHA probes Amazon warehouse where workers died with no tornado shelter | Ars Technica
https://arstechnica.com/tech-policy/2021/12/osha-investigates-amazon-after-6-die-in-warehouse-struck-by-tornado/
Amazon workers told to shelter in bathroom during tornado: 911 call
https://nypost.com/2021/12/16/amazon-workers-told-to-shelter-in-bathroom-during-tornado-911-call/
12月10日に発生した竜巻によりAmazon倉庫の従業員6人が死亡した事故では、倉庫内への携帯電話の持ち込みが禁止されており、従業員が自分の端末で気象情報を入手できない状況に置かれていたことが指摘されています。
トルネードで崩壊し死者も出たAmazon倉庫では携帯電話の持ち込みが禁止されていたことが発覚 - GIGAZINE
イリノイ州・エドワーズビルの地域では、現地時間の10日20時6分と16分に竜巻警報が発令され、最初の警報から約20分後の27分ごろに竜巻がAmazon倉庫を襲ったと気象当局は発表しています。Amazonは、ニュースメディアのCNBCに対し「倉庫の管理者は2回目の竜巻警報と同時に従業員に避難場所を探すよう指示した」と述べていますが、一部の従業員らはトイレに避難するよう指示されていたことが、緊急通報用電話番号(911)の通話記録により明らかになりました。
伝えられるところによると、同日の20時すぎにAmazon倉庫の従業員と思われる女性からエドワーズビル警察に対して通報があったとのこと。エドワーズビル警察が氏名を伏せて公表した女性通報者は通話の中で、「自分とAmazon倉庫の配送ドライバーの女性2人が倉庫に到着したところ、トイレに直行するよう指示されました」と証言。3人が建物の南にある女子トイレに避難したことや、別の場所にある男子トイレや施設の中央部にも多くの従業員が避難していることを話した上で、オペレーターに対して「たくさんの人ががれきの下敷きになり、多くの人の悲鳴が聞こえるのに、誰がどこにいるのか分かりません。とても怖いです。助けてください」と訴えました。
女性通報者と一緒にトイレに避難した女性2人のうち1人は呼びかけに対して反応がなく、心肺蘇生が可能か尋ねられると通報者は「脈を感じません……もう助かりません」と答えました。エドワーズビル消防署のジェームズ・ホワイトフォード署長はメディアの取材に対し、「倉庫の壁は厚さ11インチ(約28cm)のコンクリートでできており、高さが約40フィート(約12メートル)もあるため、多くの重量がかかったに違いありません」と述べて、がれきの下敷きになった従業員らは極めて危険な状態に置かれていたとの見解を示しました。
また、Amazon倉庫の耐久性にも問題があった可能性が指摘されています。海外メディアのArs Technicaによると、エドワーズビルのAmazon倉庫は現場で鉄筋コンクリートの板を寝かせた状態で作成してから、垂直に起こして壁にする「ティルトアップ工法」で建設されていたとのこと。この工法は建設費が安い一方で、屋根で壁を支える構造上、屋根が失われると重い壁が不安定になり危険だとされています。実際、12月10日にエドワーズビルのAmazon倉庫が竜巻に見舞われた際には、時速150マイル(時速約240km)の強風により建物の屋根が引き裂かれ、110万平方フィート(約10ヘクタール)の建物の南半分が倒壊しました。前述の女性らが避難した女子トイレも、施設の南にあったと報じられています。
by Drone Base/REUTERS
ミズーリ工科大学で構造工学を研究しているグレース・ヤン教授はメディアに対し、「ティルトアップ工法は、竜巻に耐えるよう開発されたものではありません」と話しました。
また、イリノイ州のJ・B・プリツカー知事によると、アメリカ中西部では竜巻シェルターを兼ねた地下室がある建物が多いものの、エドワーズビルは洪水が多いため問題の倉庫にも地下シェルターがなかったとのこと。構造が強化されたセーフティルームや地下シェルターがない施設では、竜巻警報が出た際にはトイレへの避難を第一の選択肢にせざるを得ないそうです。
アメリカの労働安全衛生庁は12月14日に、今回の事故に関する調査に乗り出すと発表しました。
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