「LGBTの治療」を禁止する法案がカナダ議会で可決される
近年は、Lesbian(レズビアン)・Gay(ゲイ)・Bisexual(バイセクシュアル)・Transgender(トランスジェンダー)・Queer(クィア)といったLGBTの人々が持つ多様な性的指向や性自認を、その人の個性として認める動きが進められています。カナダ議会では2021年12月、LGBTの人々を治療して異性愛者に矯正しようとするセラピー(転向療法)を禁止する法案が可決されました。
Canada's House of Commons approves bill to ban LGBT conversion therapy | Reuters
https://www.reuters.com/world/americas/canadas-house-commons-approves-bill-ban-lgbt-conversion-therapy-2021-12-01/
Canada votes to ban LGBTQ ‘conversion therapy’ | LGBT rights | The Guardian
https://www.theguardian.com/world/2021/dec/02/canada-votes-ban-lgbtq-conversion-therapy
Senate agrees to fast-track bill banning conversion therapy | CBC News
https://www.cbc.ca/news/politics/senate-conversion-therapy-adoption-1.6277097
Conversion therapy ban receives royal assent, now law in Canada - National | Globalnews.ca
https://globalnews.ca/news/8434497/conversion-therapy-ban-canada-royal-assent/
性的指向や性自認は個人のアイデンティティや生き方に深く関わる問題であり、社会的な抑圧はメンタルヘルスの悪化につながります。LGBTの学生はそうでない学生より自殺を試みやすく、「同性婚を合法化すると10代の若者の自殺率が減少する」との調査結果が報告されているほか、人の性的指向を変える転向療法を受けた人の多くが不安やうつといったメンタルヘルスの問題を抱え、自傷や自殺を引き起こすとの調査結果も示されています。
人の性的指向を変える「転向療法」は自殺や自傷を引き起こすと調査で示される - GIGAZINE
LGBTの治療については、医療機関や医学会からも「医学的な正当性を欠いており、倫理的に受け入れられない」といった批判が寄せられていますが、依然として多くの国々で行われているとのこと。こうした状況で、カナダの与党である自由党は2020年からたびたび「LGBTの治療を禁止する法案」を提出してきました。ところが、2020年3月に提出した法案は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で議会が停止したために可決が断念され、2021年6月に再提出した法案も9月の総選挙に伴う議会の解散で可決されませんでした。
総選挙が自由党の勝利に終わった後、自由党は再びLGBTの治療を禁止する法案を提出。12月1日に行われた下院議会の投票では、自由党だけでなく保守党の議員も全員が賛成する「全会一致」によって法案が可決されました。カナダ下院議会での全会一致は珍しいことであり、自由党の閣僚が保守党の議員を抱きしめる姿も見られました。
Liberal, Conservative, Bloc, NDP & Green MPs all stood together today against Conversion Therapy, and unanimously passed #BillC4. #cdnpoli #BanConversionTherapy #LoveIsLove pic.twitter.com/DkJzxp50Th
— Michael Coteau (@coteau) December 1, 2021
自由党のデイヴィッド・ラメッティ法務大臣は、「今日は重要な日です。ありのままに、あなたが望む方法で、自分自身を表現し、理解してください」とコメント。また、「保守党の幹部には、明らかにこの問題について多大なリーダーシップを発揮した人々がいます。彼らに感謝します。これは議会が共に働いたからできたことです」と述べ、足並みをそろえて賛成票を投じた保守党を称賛しました。保守党のエリン・オウトゥール党首は就任以来、LGBTの権利を支持してきた人物です。
自身が同性愛者であることを公言しており、LGBT問題に関してジャスティン・トルドー首相の特別顧問を務めるランディー・ボワソノー観光大臣は、「私はLGBTQ2の問題が政治的なサッカーにならない日を夢見ています。そして、私たちはその未来に近づいています」「私たちは人々に対し、時代の流れに乗って欲しいと主張しています。誰も拷問に同意することはできません」と述べました。
法案が下院議会を通過した1週間後の12月7日に上院議会の投票が行われ、下院と同様に全会一致で可決されました。全会一致での可決を呼びかけた保守党のリオ・フーサコス上院議員は、LGBTの治療を禁止する法案が残念ながら「政治的なサッカー」になっていると指摘しつつも、数日前に下院議会が「正しいこと」を行ったと述べています。そして12月8日には、イギリスのエリザベス2世女王によってカナダ総督に任命されたメアリー・サイモン氏がRoyal Assent(国王裁可)を与え、法律となることが決定しました。
今回の投票結果を受けて、LGBTの治療に反対する署名活動をオンライン署名サイトのChange.orgで展開してきた非営利のGets Better Canadaは、Change.org上で喜びを表明しました。
キャンペーンについてのお知らせ · Victory! Bill #C4 has received Royal Assent! · Change.org
https://www.change.org/p/end-conversion-therapy-in-canada-righttobeyoucanada/u/29938471
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