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幸福になれるかどうかを決めるのは「遺伝子」だけではない、「本人の選択や環境」も重要との主張


「幸福」は多くの人にとって人生の目標や指針となっており、人生をより充実したものにするポジティブ心理学も隆盛していますが、その一方では「その人の能力や幸福は生まれ持った遺伝子によって決められている」とする説も近年は提唱されています。「遺伝子に恵まれなかった人は幸福になれないのか?」という疑問について、アイルランド王立外科医学院でポジティブ心理学の上級講師を務めるJolanta Burke博士が解説しています。

Why some people find it harder to be happy
https://theconversation.com/why-some-people-find-it-harder-to-be-happy-171692


ほとんどの人々が幸福になりたいと願っているため、「人生を幸せに過ごす方法」や「幸福度を増すための心理的エクササイズ」などの研究は活況を呈していますが、一方でうつ病や自傷行為は依然として世界中で問題となっています。近年では、生まれ持った遺伝子が人間の健康や特性に与える影響の大きさが注目されており、「幸福になれるかどうかは遺伝子に左右される」との考えが強まっています。

実際に、2005年に科学雑誌のReview of General Psychologyに発表された(PDFファイル)記事によると、人々の幸福度の50%は遺伝子によって、40%は意図的な行動により、残りの10%はその人が置かれた環境で左右されるとのこと。当初はこの「幸福のパイ」と呼ばれる比率について、算出の基にした遺伝学的仮定が信用に値しないとして批判されたそうですが、その後の研究でも、幸福度の差異における40~50%は遺伝学によって説明されるとの結果が示されたとのこと。

多くの行動遺伝学者は、個人の成長における環境的要因と遺伝的要因を推定するため、同じ環境で育った人物として「双子」を使用しています。研究者らは一卵性双生児や二卵性双生児が同じ家庭で育てられた時、「同じ環境」に置かれると仮定していますが、Burke氏はこの仮定が実際には成り立たないものだと指摘しています。


「自然と育成は互いに独立したものではありません」とBurke氏は述べており、遺伝子は人々が自分の環境を選択する上での行動に影響を与えるため、遺伝子が異なれば環境も異なってくると主張しています。これはたとえば、親から外交的な性格を受け継いだ子どもは友達を作りやすいため、友達が多い環境で育つ可能性が高いといったものです。

同様に、その人が置かれた環境も遺伝子発現を変化させるため、同じ遺伝子を持っているからといって同じ人間になるわけではありません。たとえば、胎児の頃に母親が栄養不足に陥った場合、胎児の遺伝子発現が母体の環境に応じて変化し、成長因子の産生が抑制されます。その結果、赤ちゃんは別の環境で育った赤ちゃんより小さい体で生まれたり、心血管疾患などを抱えたりする場合があります。

Burke氏は、「自然と育成は相互に依存しており、常にお互いに影響を与え合っています。これにより、同じ環境で育った2人でも異なる反応を示すため、行動遺伝学的な『同じ環境』の仮定はもはや有効ではありません」と述べました。


さらにBurke氏は、人々が幸福になれるかどうかは「環境感受性」、つまり周囲の環境に反応したり変化したりする能力によって異なると主張しています。環境感受性は人それぞれであり、ネガティブまたはポジティブな出来事から影響を受けやすい人は、ウェルビーイングのワークショップに参加したりポジティブ心理学の本を読んだりすると、考え方・感情・行動を大きく変化させられる可能性があるとのこと。

人々の個性はDNAと同じくらいユニークであり、幸福や生活の変化に対する許容性が異なるため、全ての人に一律で有効なポジティブ心理学的介入はないとBurke氏は指摘。その一方で、確かに遺伝子によって幸福になりにくい場合はあるものの、健康的なライフスタイルに切り替えたり自分の生活する環境を変えたりすれば、幸福になれる可能性があるとしています。

「遺伝学が私たちの幸福において重要な役割を果たしたとしても、それは『私たちが誰であるか』を決定するものではありません。重要なのは、私たちがどこに住むのか、誰と一緒に暮らすのか、そして人生をどのように生きるのかといった、私たちと次の世代の幸福に影響を与える選択なのです」と、Burke氏は述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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