ニホンザルが厳しい冬を乗り切るために「魚をとる」のが確認される
ニホンザルが真冬の小川でマスなどの魚を捕って食べていることが、最近の研究で分かりました。これまでも、ニホンザルが海辺に打ち上げられた海水魚などを発見して食べていることは知られていましたが、淡水魚を積極的に捕食していることが科学的な論文として発表されたのはこれが初めてです。
Snow monkeys go fishing to survive harsh Japanese winters - study
https://www.newswise.com/articles/snow-monkeys-go-fishing-to-survive-harsh-japanese-winters-study
Japan's snow monkeys go fishing to survive the harsh winter
https://www.zmescience.com/science/biology/japans-snow-monkeys-fishing-29112021/
ニホンザルは、ヒト以外の霊長類では世界で最も北に生息していることから「最北の霊長類」と呼ばれることもあります。冬になると雪に閉ざされる山で生活するニホンザルについて、研究者らは「ニホンザルは川魚を食べて冬のエサ不足をしのいでいるのではないか」と推測していましたが、そのことを示す証拠はありませんでした。
by Veronica Belmont
そこで、イギリスのバーミンガム大学で河川の生態系を研究しているアレクサンダー・ミルナー教授らの研究チームは、飛騨山脈を中心とした中部山岳国立公園に生息するサルの排せつ物を分析する研究を行いました。
冬の山の寒さは研究チームにとって厳しいものでしたが、サルのフンを集めるミルナー氏らに向けられた観光客の冷たい視線もつらかったとのこと。ミルナー氏は、「上高地は日本で最も観光客が多い国立公園の1つなので、ニホンザルのフンを採取している時に観光客から奇異な目で見られてしまいました。また、水の流れを追跡するために染料を使った際、使用量を間違えて30分ほど川を紫一色に染めてしまい、川にかかった橋をわたっている観光客を驚かせてしまったこともありました」と語っています。
研究チームが、苦労して集めたニホンザルの排せつ物を調べたところ、マスの一種が含まれていることが判明し、ニホンザルが冬の川に入って魚を捕食していることが確かめられました。サルの排せつ物からは、ほかにも水生昆虫の幼虫も見つかりました。ニホンザルは、夏場には陸生の昆虫をよく食べていることが知られていますが、今回初めて水生昆虫をエサにしていることが確認されたとのことです。
以下のムービーを再生すると、実際にサルが冬の川に入って魚を捕らえている様子を見ることができます。
Snow monkeys going fishing - YouTube
ミルナー氏によると、この地域の川は火山に由来する地下水や温泉の影響で水温が5度程度に保たれているので、ニホンザルが川に入ってもこごえてしまうことはないそうです。
今回の研究の成果について、ミルナー氏は「ニホンザルが冬の川を訪れていることは分かっていましたが、淡水に住む生き物を食べているかどうかは、はっきりとは分かっていませんでした。ニホンザルが川魚などを食べていることを確かめた記録は、これが初めてです」と話しました。
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