生き物

なぜパンダは「ウマのうんち」を体に塗りたくるのか?


ジャイアントパンダは愛くるしい外見で人気が高い動物ですが、中国の一部地域に住む野生のジャイアントパンダは「ウマの糞便を体に塗りたくる」という奇妙な行動を取ります。一体なぜ野生のジャイアントパンダがウマの糞便を体に塗るのかについて、中国の研究チームが研究を行いました。

Why wild giant pandas frequently roll in horse manure | PNAS
https://www.pnas.org/content/early/2020/12/01/2004640117

Why giant pandas “frequently roll” in feces — study
https://www.inverse.com/science/panda-poop-study


研究チームによると、中国中部を東西に貫く秦嶺山脈に生息する野生のジャイアントパンダには、ウマの糞便の臭いを嗅いだり、ほおをこすりつけたり、糞便の上で転がったり、全身に塗りたくったりする行動が見られるとのこと。研究チームはこの行動を「ウマの糞便転がり行動」と名付けて、一体どのような理由があるのかを研究することにしました。

哺乳類が他の動物の糞便を利用するケースはジャイアントパンダ以外でもたまに観察されるそうで、捕食者が排せつした糞便の臭いを認識して危険な場所を避けたり、あえて捕食者の糞便を体に塗って臭いを模倣し、捕食者に見つからないようにしたりする動物もいます。しかし、ジャイアントパンダにとってウマは捕食者ではないため、体にウマの糞便を塗ることによる直接的なメリットはうかがえません。

以下の写真が、研究チームが撮影したウマの糞便を塗りたくったジャイアントパンダの姿です。全身が糞便にまみれ、白黒模様がわからなくなっている様子がわかります。なお、ジャイアントパンダが体に塗りたくる糞便は野生のウマが排せつしたものではなく、長安蜀漢を結ぶ秦嶺山脈の交易路を通行するウマが排せつしたものです。過去数千年にわたってこの交易路が使われてきたため、野生のジャイアントパンダがウマの糞便に慣れ親しみ、何かしらの利用法を見いだした可能性があると研究者は指摘しています。

by Fuwen Wei

まず研究チームは赤外線カメラや直接の観察、気候データなどを組み合わせてジャイアントパンダの「ウマの糞便転がり行動」を追跡しました。すると、ジャイアントパンダがウマの糞便を体に塗りたくるのは11月~4月の寒い時期が多く、気温が20度以上だとジャイアントパンダが糞便の上で転がらないことが判明。ジャイアントパンダがウマの糞便を塗りたくるのは、寒さに関連した行動である可能性が浮上しました。

さらに観察を行ったところ、ジャイアントパンダが体に塗るウマの糞便は「ウマが排せつしてから10日以内の比較的新しい糞便」がほとんどであり、古い糞便には興味を示さないこともわかりました。新鮮なウマの糞便に含まれており、古い糞便に含まれていない物質として、セスキテルペンの一種であるβ-カリオフィレン(BCP)β-カリオフィレン=オキシド (BCPO)があります。

研究チームはBCPやBCPOがジャイアントパンダのウマの糞便転がり行動と関連していると考え、動物園のジャイアントパンダを対象にした実験を行ったとのこと。研究チームは糞便の山を模倣して作られた3つの干し草の束を用意し、それぞれ「BCPとBCPO」「脂肪酸」「水」をふりかけ、ジャイアントパンダが自由に干し草の束を触れる状態にしました。すると、ジャイアントパンダは「BCPとBCPO」をふりかけた干し草の束に引き寄せられ、「脂肪酸」や「水」をふりかけた束はほぼ無視されたそうです。


また、研究チームはマウスを用いた実験で、一部のマウスにはBCPを足の裏に塗り、対照群のマウスには生理食塩水を塗りました。この状態のマウスが、温度が10度に保たれた冷たい足場と28度に保たれた常温の足場の上でどれほど長く過ごすかを観察したところ、BCPを塗ったマウスの方がより長く10度の足場の上で過ごすことが判明。また、一般的にマウスは寒さを感じると複数で群れて熱を保持しようとしますが、BCPを塗ったマウスではこの行動が観察されなかったそうで、BCPが体温調節に関与して寒さへの耐性を高めていることが推測されました。

研究チームがジャイアントパンダのゲノム解析を行ったところ、末梢の感覚神経で「冷たさ」を検出する温度センサーとして機能するTRPM8というイオンチャネルが、BCPまたはBCPOと相互作用することがわかりました。BCPやBCPOはTRPM8を効果的に抑制し、動物が感じる寒さを軽減する可能性があるとのこと。

記事作成時点ではジャイアントパンダ以外の動物がウマの糞便転がり行動を示すことは確認されていませんが、研究チームは「今回の研究は野生動物が生存適応のために生息地の潜在的な科学資源を積極的に探し、利用する方法に光を当てています」と述べました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
パンダの赤ちゃんたちが脱走を試みるただただ癒やされるムービー - GIGAZINE

ジャイアントパンダの赤ちゃんは「早く生まれ過ぎている」ことが判明 - GIGAZINE

なぜパンダは白・黒の色なのか? - GIGAZINE

竹を肉代わりの「栄養食」にできるジャイアントパンダの秘密とは? - GIGAZINE

パンダの習性を逆手に取った「双子パンダの育て方」とは? - GIGAZINE

なぜ鳥の巣はうんちまみれにならないのか? - GIGAZINE

「なぜウォンバットのうんちは四角いのか?」という謎を科学者が解き明かす - GIGAZINE

in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.