30以上もの変異を併せ持つ新型コロナの「新しい変異株」が発見される、「ニュー変異株」と呼ばれる見通し
新しい新型コロナウイルスの変異株が南アフリカで発見されたと報じられています。2021年11月26日のWHOの会合で「懸念される変異株」または「注目すべき変異株」に指定されるとみられているこの変異株は、デルタ変異株に見られる変異を含む非常に多くの変異を持っているため、ワクチンの効果の低下や重症化リスクの増加を招くおそれもあるとして、研究者らは警戒を強めています。
Heavily mutated coronavirus variant puts scientists on alert
https://www.nature.com/articles/d41586-021-03552-w
South Africa detects new COVID variant with many mutations
https://medicalxpress.com/news/2021-11-south-africa-covid-variant-scientists.html
学術雑誌・Natureは11月25日に、「南アフリカの研究者たちが、新型コロナウイルスの新しい変異株の追跡を急いでいます。この変異株は南アフリカで急速に拡大しており、デルタ変異株にも見られた変異を含む多くの変異を持っています」と報じました。
記事作成時点で「B.1.1.529」と呼称されているこの変異株は、11月にボツワナで初めて発見されたほか、南アフリカから香港へ渡った旅行者でも確認されているとのこと。また、南アフリカ最大の都市・ヨハネスブルクを擁するハウテン州で行われた遺伝子解析では、77個採取された新型コロナウイルスのサンプルの100%が「B.1.1.529」でした。
11月1日には106人だった南アフリカの1日あたりの新規感染者数は、11月23日には1万8586人に急増しています。そのため、南アフリカのジョー・ファハラ保健相は「この変異株は深刻な懸念であり、症例報告が指数関数的に増加している原因とみられます」とコメントしました。
「B.1.1.529」の大きな特徴の1つは、ウイルス粒子が人間の細胞に遺伝子を注入するのに使われるスパイクタンパク質に30以上の変異があることです。これらの変異の中には、アルファ変異株やデルタ変異株などでも見られた変異も含まれているため、過去の変異株が持っていた高い感染力や抗体を回避する能力を獲得しているおそれがあるとのこと。
南アフリカのクワズール・ナタール大学のトゥリオ・デ・オリヴェイラ氏は「WHOの専門家グループは、11月26日に会合を開いてこの変異株を『懸念される変異株』か『注目すべき変異株』に指定する可能性が高いです。もしこの変異株がWHOに認定されれば、ギリシャ文字の命名規則に従って、『Ν(ニュー)変異株』と名付けられると思われます」と話しました。
記事作成時点では、「B.1.1.529」が南アフリカ以外の地域に与える影響の程度は分かっていませんが、イギリスのオックスフォード大学でウイルスの進化を研究しているアリス・カッツーラキス氏は「デルタ変異株が流行している国では、『B.1.1.529』の流行の兆しに注意すべきです。私たちは、この変異株がほかの変異株との競争に勝ち、猛威を振るうかどうかを見極める必要があるでしょう」とNatureに述べました。
新たな変異株の出現に対し、株式市場は敏感に反応。26日の日経平均株価は一時前日比700円安の下落を見せ、1カ月ぶりに2万9000円の大台を割り込むなど、投資家心理の動揺を反映した荒れ模様を呈しています。
南ア変異株懸念で市場荒れ模様、日経平均2万9000円割れ 円買われる | ロイター
https://jp.reuters.com/article/29000-idJPL4N2SH0KE
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