1日置くと溶液が安定するので、余分な塩や不純物を取り除くため、ティッシュペーパーやコーヒーフィルターでろ過して、ろ過後の溶液を平らな皿に注ぎます。以下はペトリ皿を使っていますが、金属製でない平らなお皿ならなんでもいいとのこと。およそ50mlの溶液を、深さ1cm程度になるように注いでいきます。
溶液を注いだお皿を1~2日間、食器棚や物置といった冷暗所で放置すると、以下のように小さな結晶が発生するはず。
結晶がこのような感じになっている場合、「気温が高すぎる」「空調の風が当たっている」といった何らかの理由で溶液の蒸発速度が速すぎるとのこと。以下のような状態になった場合は最初からやり直しが必要です。
結晶の作成方法として「溶液に糸をつるす」という方法がよく解説されていますが、塩化ナトリウムは非常に繊細であり、糸などが溶液の中に入ると「透明度が高い直方体の結晶」の成長が阻害されてしまうそうです。このため、純度の高い結晶を作る方法としてチェイスさんは「底が平で小さな容器の中に溶液を入れ、蒸発率の低い環境で結晶を育てていく」という方法を推奨しています。チェイスさんが試したところ化粧品ケースが最適だったとのこと。
しっかり乾いている容器を別個に用意したら、先ほどの溶液を注ぎ入れ、ピンセットを使ってその中に「結晶のかけら」を静かに移します。
4つの容器に「結晶のかけら」を入れ、蒸発速度の異なる環境で結晶を育てると以下のような感じ。左側がより蒸発速度が遅い環境、右側がより蒸発速度が速い環境で育てられたものです。蒸発速度が速くなるほど結晶が白く濁っていくのが確認できます。
以上のように蒸発速度が遅い環境ほど結晶の透明度は高くなるため、透明度の高い結晶を作るには、以下のように結晶の入った容器をさらに大きな容器で覆って、溶液の表面があまり空気にさらされないようにします。基本的にはこの手順できれいな塩の結晶が完成するはず。
……が、実際にやってみると、結果にはばらつきがあるよう。以下は、「1」が理想的な状態。「2」は結晶の周りに塩粉が散っており、結晶のかけらを移すときに結晶が傷ついた可能性があるとのこと。「3」は前述のとおり溶液の蒸発速度が速すぎてにごりが生じた状態。「4」は湿度が高すぎるか、十分に溶液が飽和していなかったかで、結晶が溶けはじめています。「2」の場合は結晶を別の容器に移して再度育て始めればOK。「3」「4」の場合は、「1」のように理想的な状態にはならないものの、そのまま育て続けることで「興味深い結晶」が完成するとのことです。
「1」をそのまま育て続けると、以下のように非の打ちどころがない見事な結晶が完成します。
チェイスさんが作成した、「理想的な結晶」の数々が以下。いずれも1cmを超える大きさで、透明度が非常に高く、規則正しい形をしています。
プロセスに狂いが生じると結晶が不規則な形になったり……
白くにごってしまうこともあります。
また、蒸発をコントロールするカバーを用意せず、最初から大きな容器で結晶を育てると、「途中から結晶が曇る」という現象が発生するそうです。この場合、白く曇る部分と透明な部分が両方存在する結晶となります。これがチェイスさんの言う「興味深い結晶」です。
溶液の蒸発速度が速かった結果、くもった結晶になっても、大きく育てればまた別の趣があります。
部屋の湿度が高く、途中で結晶が溶けてしまっても、その後に環境が戻ると「独特な白いもやが透明な結晶に閉じ込められる」という状態になります。
また、結晶のかけらが直方体ではなくピラミッド型になったとき、そのまま育てることで以下のようなものが育ちます。ただし、この場合、結晶が容器の底にくっついてしまうとのことです。
また日本の食品衛生法では(PDFファイル)認められていませんが、海外で販売されているヨウ素添加塩の場合、単結晶の形成が難しいとのこと。またミネラルを多く含む岩塩や海塩についても、違った結果をもたらす可能性がある、とチェイスさんは述べています。
塩化鉄(III)を加えると透明度が高まり、一方で一部が黄色く色づくという報告もあります。