サイエンス

脳が次の行動を予測するのは「エネルギー消費の効率化」の結果だという指摘


人間は目や耳で物事を感じたとき、得られた情報をもとに次に起こる出来事の予測を立てることができます。この「物事を予測する」という脳の働きは、実は「エネルギー消費の効率化」を図った進化の結果である可能性が、人工ニューラルネットワークを用いた調査などにより示されました。

To Be Energy-Efficient, Brains Predict Their Perceptions | Quanta Magazine
https://www.quantamagazine.org/to-be-energy-efficient-brains-predict-their-perceptions-20211115/

「脳が次の現象を予測する」という神経科学的な疑問を人工知能の観点から読み解くため、ハーバード大学の神経科学者であるウィリアム・ロッター氏らは時系列に沿った動的な動きを処理するネットワーク「リカレントニューラルネットワーク(RNN)」を、動画の一連のフレームから次のシーンを予測するように設計。PredNetと名付けたこのニューラルネットワークを複数の動画で学習させました。

PredNetはサルの脳の視覚野のニューロンと類似性が見られたほか、「可能な限り少ないエネルギーでタスクを実行する」という条件に焦点を当てて分析したところ、予測性能が向上するにつれ、より少ないエネルギーで効率的に動作することが分かったとのこと。このため、ニューラルネットワークの動作が脳神経の動作にも当てはまるのかについての研究が待たれました。


このことを明らかにするべく、マギル大学の神経科学者であるブレイク・リチャーズ氏はマウスを使った実験を敢行。この実験の初期段階では未知の刺激に対して積極的に脳神経の接続が行われていたものの、時間の経過と共に同種の刺激に適切に対応していき、その刺激に対する神経の応答が減少していったとのこと。

マウスが「予測した刺激」と「予測できなかった刺激」に対して異なる反応を示し、予測できなかった刺激に対してはより適切な予測を行うよう学習してエネルギー使用料を最小限に抑えていたことが分かったことから、リチャーズ氏は「物事を予測するという脳の働きがエネルギー消費の効率化からきたものであるという考えに関するこの時点での証拠には、かなり説得力があると思います」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1p_kr

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