サイエンス

「相乗的なリーダーシップ」「新たなレベルの適応的一貫性」などのデタラメなビジネス用語を好む労働者は仕事の能力が低い


ビジネスの現場では「相乗的なリーダーシップ」「成長をハッキングするパラダイム」といった風に、良いことを言っているように見えて実際は何を言っているのかわからないビジネス用語が多用されています。こうしたデタラメなビジネス用語を好む労働者は仕事に関連する能力が低い傾向があることが、アメリカのコーネル大学の研究で明らかになりました。

The Corporate Bullshit Receptivity Scale: Development, validation, and associations with workplace outcomes - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0191886926000620


Workers who love ‘synergizing paradigms’ might be bad at their jobs | Cornell Chronicle
https://news.cornell.edu/stories/2026/03/workers-who-love-synergizing-paradigms-might-be-bad-their-jobs

ビジネス用語と一口に言ってもその内容はさまざまで、一部の実用的なビジネス用語は使用するメンバーにとって有用で、コミュニケーションをより正確かつ効率的にすることができます。しかし、中には聞こえが良くて印象的なもののその実態がよくわからない、「デタラメなビジネス用語(Corporate bullshit)」も存在しています。


コーネル大学の博士研究員であるシェーン・リトレル氏は、「デタラメなビジネス用語とは、混乱を招きやすい抽象的なバズワードを機能的に誤解を招くような形で用いる、特殊なコミュニケーションスタイルです。社内コミュニケーションを多少は円滑にしてくれる専門用語とは異なり、デタラメなビジネス用語は理解を深めるどころか混乱させるものです。聞こえは良いかもしれませんが、意味的には空虚なのです」と述べています。

誰かを引きつけるために、デタラメでもいいから印象的な言葉を使うケースはよく見られますが、それが社内全体で奨励されている場合は問題が生じます。デタラメなビジネス用語が当たり前になっている職場環境では、野心的な従業員がデタラメなビジネス用語を利用して自分を有能な人間に見せかけ、職場での影響力を強める可能性があるとのこと。

リトレル氏は今回の研究で、「デタラメなビジネス用語への感受性」と「労働者としてのスキル」の関連性を調べる実験を行いました。リトレル氏は実験のために「デタラメなビジネス用語生成器」を作成し、これを用いて「私たちは揺りかごから墓場まで、新たなレベルの資格認定を実現します」「私たちのベストプラクティスを仲間に共有することで、新たなレベルの適応的一貫性をプレッシャーテストします」といった、意味不明なものの印象に残る文章を大量に生成しました。

実験では合計1000人以上のオフィスワーカーを募集し、ソフトウェアで生成したデタラメなビジネス用語とフォーチュン500企業のリーダーたちが実際にした発言を読んでもらい、それぞれのビジネスセンスを評価するよう依頼しました。さらに既存の認知テストを行ってもらい、デタラメなビジネス用語への感受性と労働者としてのスキルの関連性を調べました。


実験の結果、デタラメなビジネス用語への感受性が高い労働者は、分析的思考・認知的内省・流動性知能といった職場でのパフォーマンスに関わるスキルの一部が低い傾向がみられました。また、これらの労働者は職場における効果的な意思決定能力を測定するテストでも、有意に低いスコアを示しました。

その一方で、デタラメなビジネス用語への感受性が高い労働者は、仕事への満足度や企業のミッションステートメントへの共感が高く、それを広めようとする傾向があることもわかりました。

今回の研究結果は、デタラメなビジネス用語に刺激を受ける労働者は、会社にとって効果的な意思決定をする能力が低い可能性を示すものです。リトレル氏は、「これは懸念すべき悪循環を生み出します。デタラメなビジネス用語にだまされやすい従業員は、それを利用しやすいタイプの機能不全なリーダーを昇進させ、一種の負のフィードバックループを生み出す可能性があります」と指摘しています。

また、デタラメなビジネス用語が行きすぎると、それ自体が企業の評判に傷を付ける可能性もあります。たとえば2009年、ペプシのマーケティング文書に「The Pepsi DNA finds its origin in the dynamic of perimeter oscillations……(ペプシのDNAは境界振動の力学にその起源を見出され……)」という意味不明な文言が入っていることが判明し、さまざまな報道機関で嘲笑されることとなりました。

また、2014年にはMicrosoft幹部が従業員に送った途方もなく長いメールで、10段落にわたってビジネス用語を書き連ね、11段落目でようやく「1万2500人の従業員を解雇する」というメールの要点が記されていたことが批判されました。このメールはメディアから「史上最悪のメール」とも呼ばれています。


リトレル氏は、測定したデタラメなビジネス用語への感受性を応用することで、将来的に求職者の分析的思考や意思決定の傾向に関する洞察を提供できるかもしれないと考えています。

リトレル氏は、「ほとんどの人は状況次第で、洗練されているように聞こえるが実際はそうではない言葉にだまされてしまいます。だからこそ従業員であれ消費者であれ、組織的なメッセージ(リーダーの発言、公開報告書、広告など)に遭遇した際に立ち止まって、『これは具体的に何を主張しているのか?本当に理にかなっているのか?』と自問する価値があります。なぜなら、メッセージが流行語や専門用語に依存している場合、それは現実ではなくレトリックに導かれている危険信号であることが多いからです」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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