たった99秒で「CPUの作り方」がわかるムービー
現代人の日常生活には欠かせないPCやスマートフォンをはじめ、コンピューターを組み込んだ電化製品にはCPU(中央演算ユニット)やGPU(グラフィックス演算ユニット)と呼ばれる半導体チップが搭載されています。こうしたCPUやGPUなどの半導体チップがどうやって作られるかをたった99秒で説明するムービーを、ソフトウェアコンサルタントのロバート・エルダー氏が公開しています。
Man Solves Global Chip Shortage In 99 Seconds - YouTube
まず石を拾います。
拾った石を粉々に砕きます。
すると純度98%の二酸化ケイ素ができました。
これをさらに純度99.9%の二酸化ケイ素に精製します。
さらにこの二酸化ケイ素を、99.9999999%の多結晶シリコンに精製します。化学式はSiO2+2C→Si+2COです
この多結晶シリコンを高温で溶融します。
温度は1698K(約1425℃)。もちろん家庭用のキッチンコンロでは出せない温度です。
溶けた多結晶シリコンに、種となる単結晶シリコンを浸し、冷やしながらゆっくりと引き出すと……
巨大なシリコンの単結晶ができます。小さな単結晶を溶融状態のシリコンに浸し、超高純度の単結晶を成長させて引き上げる方法は「チョクラルスキー法」と呼ばれています。
このシリコンの単結晶を薄くスライスします。
スライスした上で鏡面になるまで磨き上げたのが、このシリコンウェハー。このシリコンウェハーにホウ素を加えるとP型半導体、リンを加えるとN型半導体となり、トランジスタの材料になります。
シリコンウェハーに酸化膜を形成させ、その上に感光剤を塗ります。
エルダー氏が持つのは回路パターンがプリントされた石英製のマスクパターンです。
このマスクパターンを通して紫外線を当てることで、回路パターンを感光剤の薄膜に焼き付けます。
焼き付けたら現像液でウェハーを洗います。
さらに腐食剤を使い、エッチングを行います。マスクパターンで紫外線が当たった部分の感光剤は、現像液で取り除かれています。つまり、回路の部分だけ酸化膜が露出している状態で、ここに腐食剤を使うと、回路の部分だけ酸化剤膜も取り除かれ、シリコンウェハーがむき出しになるというわけです。
純水でウェハーを洗うと……
以下のようにシリコンウェハー表面に回路パターンが見えるようになります。
ここからシリコンを電気的特性を持った半導体になるようになるまで、さまざまな処理や研磨を何度も行います。
これでシリコンウェハーの完成。1つのチップの回路が1枚のシリコンウェハーの上に何枚も印刷されている状態です。
このシリコンウェハーを細かく切っていきます。
1つ1つ切り離すとこんな感じ。それぞれにおいて良品・不良品の選別が行われます。この1枚のウェハーから得られる良品の割合が「歩留まり率」と言われるものです。
製造されたチップは、十数マイクロメートルから数百マイクロメートルの細い導線を使って電気的に基板や電極と接続します。
このチップはかなり大きいものですが、PCやサーバーで使われている最先端のCPUはもっと細かく小さいサイズで設計・製造されています。
なお、当然ながらムービーでの作業はあくまでもジョークなので、本当に作っているわけではありません。個人の範囲でシリコンから半導体チップを作るのは至難の業で、TSMCやIntelのようなナノメートル単位のものは不可能。ただし、エルダー氏によれば、マイクロメートル単位のものであれば個人でも挑戦可能とのことで、例えばYouTuberのSam Zeloof氏はシリコンから半導体チップを自家製造する様子をYouTubeで公開しています。
Upgraded Homemade Silicon Chips - YouTube
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