月でもインターネットと同様の仕組みを提供する「LunaNet」をNASAが開発
NASA/Reese Patillo
人類を再び月に送る「アルテミス計画」に合わせて、NASAが月面での活動を拡大するための「LunaNet」アーキテクチャを開発しました。
LunaNet: Empowering Artemis with Comm and Nav Interoperability | NASA
https://www.nasa.gov/feature/goddard/2021/lunanet-empowering-artemis-with-communications-and-navigation-interoperability
LunaNet: Enhancing Connectivity and Empowering Missions at the Moon - YouTube
宇宙ミッションにおいて、地上との通信は宇宙中継や地上のアンテナとの事前に設定されたリンクに依存しています。この方式の問題点は、複数のミッションが並行したときに、通信機会や効率が制限されることにあります。「LunaNet」はインターネットに似たネットワークアプローチを提供するもので、ユーザーは大規模なネットワークとの接続を維持でき、データ転送を事前にスケジュールする必要がないとのこと。
LunaNetの中核となるネットワークフレームワークは遅延耐性ネットワーク(DTN)で、信号が途絶する可能性があっても、データがネットワークをシームレスに流れ、最終目的地に到達することを保証します。2つのLunaNetノード間で障害が発生した時には、経路が回復するまでノードがデータを保存します。
また、月面ナビゲーションにおいて、LunaNetは高精度を維持しつつ、地球上のデータ処理からの運用独立性を確保します。LunaNetナビゲーションを利用するミッションは、軌道決定や誘導システムの運用、測位に必要な主要測定値にアクセスできるようになり、月面・軌道上問わず、月での自律飛行に必要なすべてを入手できます。
技術担当副責任者のシェリル・グラムリング氏は「LunaNetは地球に依存しないナビゲーションの新たなパラダイムを提供し、有人・ロボットミッションで迅速に自分の位置を特定して計画システムにフィードバックできるようになります」と述べています。
さらに、LunaNetの検知・情報サービスが、警告やその他の重要情報をユーザーに提供することで、月面上にいる宇宙飛行士やローバー、その他のアセットからの状況認識が大幅に向上します。たとえば、宇宙気象観測機器を用いて危険な太陽活動を検出したときに、地球上のネットワーク管理者からの指示を待つことなく、ユーザーに直接警告を発することができます。
サーチ&レスキューオフィスのミッションマネージャーであるコーディ・ケリー氏は「アルテミス計画では、宇宙飛行士の安全と健康が重要な懸念事項です。LunaNetのナビゲーションサービスを利用してNASAの遭難ビーコンに位置データを提供し、不測の事態に備えています」と述べました。
また、LunaNetのサイエンスサービスでは、電波や赤外線の光通信リンクを使って、地球上にいる研究者に測定の機会を提供するとのこと。ノードネットワークが月のベースライン観測の機会を提供し、月環境の包括的な研究を長期にわたって行うための頻繁な測定を可能にします。また、ノードを配置することで月に帯する地域的または地球規模での観測が可能になり、科学者が大規模な空間スケールで月のデータにアクセスできるようになります。
LunaNetのアンテナは遠くの天体からの電波放射を探す電波天文学のような用途でも用いられる可能性があります。これらの機能は、宇宙科学に関する新たな理論を検証し、科学的知識を深めるためのプラットフォームを科学者に提供するとのことです。
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