大学の入学者数を増やすためのアルゴリズムが高等教育の危機を招いているという指摘
アメリカの大学が必要な学生を集めるために用いている「入学アルゴリズム」が、大学中退者や学生ローンで借金を抱える人を増やし、人種的不平等につながっているおそれがあることが指摘されています。
Enrollment algorithms are contributing to the crises of higher education
https://techpolicy.press/enrollment-algorithms-are-contributing-to-the-crises-of-higher-education/
Enrollment algorithms are making higher education a hellscape
https://www.inputmag.com/tech/enrollment-algorithms-are-making-higher-education-a-hellscape
指摘をしているのはシンクタンク・ブルッキングス研究所のアレックス・エングラー氏。アメリカでは大学の75%が「入学アルゴリズム」を活用しています。大学はできるだけ多くの学生に入学してもらいたいと思っていますが、欲しいのは「経済的支援をあまり求めずに入学してくれる学生」だとのこと。このため、入学アルゴリズムは「教育機関がお金を稼ぐために必要な学生」を正確に呼び込めるように設計されており、学生だけが痛い目を見るようになっているそうです。
エングラー氏の調べによると、学生が受け取る奨学金の内容は、入学意欲だけではなく卒業とも関係していて、1000ドル(約11万円)の奨学金は卒業する割合を1%増加させたものの、学生ローンの額が1000ドル増えると、低所得世帯の学生の卒業割合は5%以上減ったとのこと。
先行研究により、4年制大学を6年以内に卒業する学生の割合は62%であることが示されているほか、中退者は平均して1万4000ドル(約155万円)の借金を背負っており、返済できているのは半数であることがわかっています。借金を抱えて中退している学生の数を考えると、高等教育機関が、学生の卒業やその後の成功のためではなく、学校に通い続けさせるために奨学金を最適化している可能性があることは国家の懸念事項であると、エングラー氏は指摘しています。
また、入学アルゴリズムに、他のアルゴリズムと同じようにバイアスがかかっていることが指摘されています。具体的には、州の黒人人口を考慮したとき、黒人学生の数が本来想定される数より10ポイント低い公立の主要な大学が15校あったとのこと。さらに、卒業生数の割合は、白人と比べて黒人が20ポイント低く、ヒスパニックも10ポイント低かったそうです。
こうした結果からエングラー氏は、「大学はアルゴリズムに基づいて援助や入学資格の適否を決定するのをやめて、学生の実力と経済状況に基づき人間が最終的に審査すべきです」と、アルゴリズムを使わないよう述べています。
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