中性子ビームを用いた最新の分析がシリコン結晶の特性や「第5の力」に関する知見をもたらす
中性子のビームを使用した手法で、半導体などに使用されるシリコン結晶を分析したと国際的な研究チームが発表しました。今回の実験により、シリコン結晶の特性や「第5の力」に関する知見が深められたとのことです。
Pendellösung interferometry probes the neutron charge radius, lattice dynamics, and fifth forces
https://www.science.org/doi/10.1126/science.abc2794
Neutron Beam More Accurate Probe Than X-ray, Could Also be Used to Find Physics’ ‘Fifth’ Forces | NC State News
https://news.ncsu.edu/2021/09/neutron-beam-accurate-probe-fifth-forces/
Groundbreaking Technique Yields Important New Details on Silicon, Subatomic Particles and Possible ‘Fifth Force’ | NIST
https://www.nist.gov/news-events/news/2021/09/groundbreaking-technique-yields-important-new-details-silicon-subatomic
アメリカ国立標準技術研究所(NIST)が率いる国際的な研究チームは、中性子のビームを利用した手法でシリコン結晶を分析しました。結晶構造の分析では一般的にX線が用いられますが、電荷を持たない中性子は結晶内の電子と強く相互作用しないため、より結晶の測定に適しているとのこと。
今回研究チームが選択したのは、「Pendellösung interferometry(ペンデル縞干渉法)」という珍しい手法です。粒子と波の性質を合わせ持つ中性子が結晶を通過すると、結晶内の原子平面に沿った定常波と原子平面間にある定常波、2つの異なる定常波が生まれます。これらの定常波が相互作用するとペンデル振動と呼ばれるパターンが生成され、このパターンを分析することで、結晶内で発生している力に関する情報が得られる仕組みです。
NISTの科学者であるマイケル・フーバー氏はペンデル振動を用いた分析について、「2つのギターを用意して同じ音を鳴らした後、一方は滑らかな道路を走り、もう一方は凸凹のある道路を走る」という表現で説明しています。この場合、鳴った時点では同じだった音が違う構造の道路で反射するため、音の違いを分析することで道路の上にある凸凹についての洞察が得られます。研究チームは従来のペンデル縞干渉法を改善し、最初の測定の後にシリコン結晶を回転して違った角度でも測定することにより、分析の精度が約4倍に向上したと述べています。
by aka CJ
研究チームは、試料内部の構造を測定する手法の1つであるX線散乱法によって予測された値を、ペンデル振動を用いた分析でテストしました。X線散乱法は原子の熱振動によって精度が制限されますが、今回のテストによって原子核と電子の振動が従来の想定ほど厳密ではない可能性が示唆されたため、いくつかのX線散乱法モデルは熱振動による影響を過小評価しているとのこと。
また、今回の分析によって基本相互作用を超えた「第5の力」が作用する可能性がある範囲が、これまでの想定よりも狭い0.02ナノメートル~10ナノメートルに制限されたとのこと。第5の力とは、自然界にある電磁気力・弱い力・強い力・重力という4つの基本相互作用以外の相互作用であり、1970年代から存在する可能性が指摘されてきたものの、記事作成時点では確証が得られていません。第5の力の及ぶ範囲がより制限されたことで、今後の研究で発見しやすくなると考えられています。
ノースカロライナ州立大学の物理学教授であり論文共著者のアルバート・ヤング氏は、「今回の作業における素晴らしい点はその精度だけでなく、卓上で実験を行った点です」とコメント。「今回のような小規模で正確な測定を行うことで、基本的な物理学に関する最も困難ないくつかの質問を前進させることができます」と述べました。
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