ラグビーのプレーによる脳へのダメージはあるのか?
スクラムを組み、体と体を激しくぶつけ合うラグビーですが、あまりの激しさ故に体へのダメージはないのかというのも気になるところ。サウスウェールズ大学のトーマス・オーエンス氏らの研究により、ラグビーを1シーズンプレイすることがラガーマンの認知機能などにどんな影響を与えるのかが明らかになりました。
Contact events in rugby union and the link to reduced cognition: evidence for impaired redox‐regulation of cerebrovascular function - Owens - 2021 - Experimental Physiology - Wiley Online Library
https://physoc.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1113/EP089330
New head impact study reveals rugby players’ brains affected in just a single season - Buzz.ie
https://www.buzz.ie/sport/rugby/new-head-impact-study-reveals-24878966
オーエンス氏らは、ユナイテッド・ラグビー・チャンピオンシップでプレーしたプロのラグビー選手21人を対象とし、シーズン前後に認知機能検査や静脈血の超音波検査などを行い、選手同士の接触が脳血管や認知機能にどのような影響を与えるのかを調査しました。
調査の対象となった1シーズンの中で、フォワードを務めた選手で5回、バックスを務めた選手で1回の合計6回脳しんとうが発生しました。スクラムを組むフォワードはバックスよりも他選手との接触回数が多く、1シーズンの間に平均およそ7回のコリジョン、およそ3回のタックル、およそ2回のジャッカルという大きな接触を経験しました。
また、脳の検査と認知機能検査の結果から、ラグビーを1シーズンプレイした選手は脳の酸素供給が減少し、認知機能が低下していたことも判明。フォワードを務めた選手はバックスを務めた選手よりも、被った影響が大きかったことも分かっています。
オーエンス氏らは「プロの選手は体格が大きいため、接触の影響がアマチュアよりも大きくなる可能性があります。また、回復と修復のための期間もアマチュアより短いです。一方アマチュアは技術がプロに比べ貧弱なため、よりプレー中の危険が高まります」「影響が時間の経過と共に蓄積する可能性があるため、現役の選手と引退した選手の両方を比較する長期的な研究が必要です」と述べました。
2020年以降、元ラグビー選手200人が「永続的な脳損傷を受けた」として法廷闘争を開始しています。事態を重く見た国際競技連盟のワールドラグビーは今回の研究にも触れ、「脳しんとうの研究への投資を2倍にする」と発表。問題の調査を開始しています。
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