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音楽ストリーミングサービスが普及した時代に「音楽海賊版の失われた喜び」をアーティストが語る


CDの全盛期には違法に音楽ファイルを共有するトレントサイトが人気を集めていましたが、現在ではストリーミングサービスによる無料視聴や動画サイトでアーティスト自身が無料公開するケースも多く、音楽の海賊版を取り巻く状況は大きく変化しています。音楽メディアのPigeons&Planesは「音楽著作権侵害の失われた喜び」という記事を公開し、海賊版の盛衰に伴う音楽コミュニティの変化などをまとめています。

The Lost Joy of Music Piracy: WhatCD, Oink, and Spotify | Pigeons and Planes
https://www.pigeonsandplanes.com/read/music-piracy-what-cd-oink-nine-inch-nails-streaming


アメリカのロックバンド「ナイン・インチ・ネイルズ」など幅広い活動で知られるクリエイティブディレクターのロブ・シェリダン氏が、Pigeons&Planesのインタビューでインターネットと音楽について語りました。シェリダン氏は音楽業界で数十年にわたるキャリアを持ちながら、メディアの著作権侵害を公然と擁護する人物として知られており、インタビューの日も大手海賊版サイト「The Pirate Bay」のロゴに使われたこともある「HOME TAPING IS KILLING MUSIC(ホームテーピングは音楽を殺している)」のロゴが入ったTシャツを着ていたそうです。


シェリダン氏は高校時代から違法ファイル共有の世界にどっぷりとはまっており、学生寮のローカルネットワークに誰もが自分のMP3コレクションをアップロードしていたと話します。当時高くて買えなかったアルバムをいくつも聞いた上で多くの音楽のファンになり、ナイン・インチ・ネイルズのファンサイトも作成していたことから、1999年にはバンドの公式ページのデザインを担当することになりました。

シェリダン氏はナイン・インチ・ネイルズのリーダーであるトレント・レズナー氏をBitTorrentトラッカー「Oink's Pink Palace」のコミュニティに招待したことを明かしました。2004年に設立されたOink's Pink Palaceは当時ほぼ全てのアルバムを高音質でダウンロードできるほど巨大なコミュニティであり、レズナー氏は過去のインタビューで「Oink's Pink Palaceは世界最高のレコード店」と言及したことがあります。


そしてシェリダン氏とレズナー氏は2007年にリリースするアルバム「Year Zero」を、USBメモリをライブ会場などに意図的に置く形で自らリークするというプロモーションで話題を呼びバイラルマーケティングに成功したとのこと。2007年10月にOink's Pink Palaceのサーバーが警察の捜索を受けてサイト作成者が逮捕された際には、シェリダン氏は「レコード業界の自殺の短い歴史」と題したブログを投稿し、「このサイトは世界で最も完全かつ最も効率的な音楽配信モデルであり、同レベルの合法的な音楽サービスがあれば、喜んで高額な月額料金を支払う」と語りました。翌年、ナイン・インチ・ネイルズはアルバム「The Slip」を、公式サイトからの直接ダウンロードとBitTorrentを通じて無料公開しました。

Oink's Pink Palaceが閉鎖された日には、新たな招待制音楽BitTorrentトラッカーおよびコミュニティの「What.CD」が設立されました。シェリダン氏はWhat.CDの成功を「ますますデジタル化が進む状況に適応できなかった音楽業界の失敗の産物」と表現しています。実際に招待を得てWhat.CDのメンバーになったというシェリダン氏は、「もはや、アクティブなMediafireリンクを求めて音楽ブログやフォーラムをくまなく探したり、ネットで読んだマイナーなアルバムを求めていくつものトレントサイトを巡ったりする必要はなくなりました。音楽の世界全体が、突如として一つの場所に集結したのです」と語っています。


What.CDのアクセスには利用実績を積んだユーザーの招待が必要であり、そのプライベート性により法執行機関から摘発されにくい構造になっていました。Pigeons&Planesの取材に答えたWhat.CDの元スタッフ兼モデレーターである人物は、「公開サイトにはコミュニティが存在せず、アカウントもなければ、善意以外にファイルを共有するモチベーションとなるものもほとんどありません。プライベートトラッカーは、アカウントが1つだけであることを前提に構築されているため、アップロードとダウンロードの比率を追跡する仕組みにより、コンテンツをシードし続け、他の人が利用できるようにするための大きなインセンティブが生まれます。これが、プライベートトラッカーが包括的で信頼できるものとなる魔法を生み出したのです」とWhat.CDの仕組みについて説明しました。2011年頃には、What.CDは史上最大の音楽アーカイブにまで成長していますが、最終的に2016年11月に閉鎖されました。

What.CDのサービス停止と時期を同じくして、ストリーミングサービスが一般に普及し始めました。CDの売上が急落し続ける中、レコード会社は物理的なリリースから撤退し、大規模な音源流出はますます稀になりました。シェリダン氏は「音楽は自由であるべきだという考えは、音楽がどこに向かっているのかを示す声明のようなものでした。ストリーミングはアーティストにとって経済的に持続可能ではなく、月に何百万回もストリーミング再生されているにもかかわらず、生活費すら払えないアーティストがいる一方で、Spotifyは人気ポッドキャスト司会者に巨額の契約金を支払っています。どれだけのお金が億万長者や大企業に流れ込んでいるかを示す例があまりにも多く、アーティストは常に不当な扱いを受けています。それが、私たちが今の状況に置かれていることへの私の不満です」とストリーミングが主流になった社会への不満を語っています。

Pigeons&Planesは、「What.CDの本質は単なるトレントトラッカー以上のものだった」と指摘し、音楽に情熱を注ぐファンたちのコミュニティの重要性を語っています。インターネットはミュージシャンに新たな扉を開いた一方で、「オンライン空間の企業化」と「アルゴリズムによる支配」を進行させ、自然な音楽発見とインディーズコミュニティに修復不可能なダメージを与えたとPigeons&Planesは述べています。ストリーミングサービスの普及により音楽著作権侵害は減少しましたが、海賊行為によって阻害されていたはずの経済的安定をアーティストにもたらすどころか、レコード業界はアーティストへのわずかな報酬と、無機質なユーザーインターフェースを備えた製品を提供してきたと批判的に述べ、「ミュージシャンが今なお搾取されていることは明らかです」と締めくくっています。

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in ネットサービス, Posted by log1e_dh

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