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インフルエンサーを「コラボしませんか?」と狙い撃つ悪徳ファッションブランドのボットのやり口とは?


SNSなどで世間に与える影響力が大きい人々「インフルエンサー」は、自身の影響力を生かした宣伝活動などで収益を上げていますが、その影響力から詐欺師などに狙われる可能性が大きいといえます。インフルエンサーに「コラボしませんか?」とダイレクトメッセージを送信するアカウントを2万個以上も運用しているとみられるファッションブランド「Vincere」の実態について、ソフトウェアエンジニアリングの専門家として国際連合やアメリカのデジタルサービス局に勤務した経歴を持つマリアンヌ・ベロッティ氏が解説しています。

Who’s Running the Vincere Bot Network on Instagram? | by Marianne Bellotti | The Startup | Jul, 2021 | Medium
https://medium.com/swlh/whos-running-the-vincere-bot-network-on-instagram-a558be6c69db

VincereはTシャツやスウェット、ジーンズ、サングラスなどのファッションアイテムを多数取りそろえるストリートウェア系のファッションブランドです。2021年7月12日時点でInstagram上のフォロワー数は14.9万人と、少なくともSNS上で一定以上の成功を収めているように見えます。

Vincere(@vincerewears) • Instagram写真と動画
https://www.instagram.com/vincerewears/


しかし、ベロッティ氏の調査によると、このVincereは大規模なボットネットワークを構築しているとのこと。ベロッティ氏がVincereを疑ったきっかけは、Instagramで運用されているボットの調査のために作成した罠アカウントにVincereから「Collab? DM @vincerewears(コラボしませんか? もしよろしければ@vincerewearsに返信してください)」というダイレクトメッセージが届いたことでした。


この罠アカウントはフォローしているアカウントもなければ知り合い以外のフォロワーもおらず、投稿にハッシュタグも一切付け加えていなかったため、「何を経由してVincereのボットがこちらを知ったのか」が謎でした。こうして好奇心をかき立てられたベロッティ氏が調査を行ったところ、Vincereが2万件以上のアカウントを駆使してインフルエンサーを引っかけるためのボットネットワークを構築している疑いが浮上したとのこと。

Vincereは「ドロップシップ」と呼ばれる販売形態を採るブランドです。ドロップシップとは、製品の自社製造・自社保管・自社出荷などは一切行わず、注文を受け取った後は製造・保管・出荷を中国の専門業者に丸投げするという販売形態。実際にVincereで99ドル(約1万1000円)で販売されているTシャツは、中国のアリババグループが運営するオンライン小売りサービスのAliExpressで16ドル(約1800円)で販売されていることがわかっています。つまりVincereは差額の83ドル(約9100円)を利ざやとして稼いでいるというわけです。


VincereがAliexpressで販売されているTシャツに5倍の値をつけていようと、違法ではありません。しかし、ベロッティ氏によると、ドロップシップは製造・保管・出荷などを丸投げしていいという参入障壁の低さから業者間の競争が深刻化しており、業者が規約上禁じられているボットによる広告活動に手を染めるケースが多くなっているとのこと。こうした業者はボットを活用し、「あなたには特別に全製品を50%オフにします。さらにこちらで発行したコードを宣伝していただいて、フォロワーが買い物を行った場合は、一定のマージンを差し上げます」とインフルエンサーに取引を持ちかけたり、ブランド・アンバサダーになるように依頼したりしています。

このようにボットを活用しているファッションブランドはVincereに限ったことではありません。こうしたブランドはたいていの場合は追跡されないように住所を秘匿するものですが、中には私書箱の住所を巧妙に偽装した上で掲載しているブランドも確認されています。この私書箱を住所として使用しているLasting Impact LLCという企業は、傘下のUrban Ice・Valerio・Brute Impact・Pink Pineapple・HypeAuthorityというブランドで住所を使い回していることまで判明しています。


しかし、ベロッティ氏によると、Vincere以外のブランドが運用していると疑われるボットのアカウントを総計しても1万9000個である一方、Vincereは2万を超えるアカウントを運用している疑いがあるとのこと。

ベロッティ氏の好奇心を刺激した「Vincereのボットがフォロワー&フォローのないアカウントによるハッシュタグのない投稿を見つけた方法」については、ロケーションタグが用いられた可能性があるとのこと。ロサンゼルスにある一面ピンクの長大な壁The Pink Wallや約1億年前に冷えて固まったマグマが地下水によって浸食した巨岩が立ち並ぶジョシュア・ツリー国立公園はいわゆる「インスタ映えスポット」として知られており、ロケーションタグでこれらの場所を検索するとインフルエンサーがポーズを決めている画像を多数収集できます。


きっかけとなったベロッティ氏の投稿もロケーションタグが付与されていたためVincereのボットに検知されたとみられており、実際にベロッティ氏はハッシュタグを一切付けずにグリフィス天文台で撮影した写真を投稿した結果、ボットからメッセージが送られてきたと述べています。

こうしたボットネットワークはVincereなどのファッションブランドが直接的に運用しているわけではなく、少なくともネットワークの一部を「市場から買っている」形跡もあるとのこと。その傍証としてベロッティ氏が挙げているのがボットのアカウント名で、Vincereを宣伝するボットの中にはVincereと競合するファッションブランド「Valerio」の名称を含んでいるアカウントが多数確認されています。


ベロッティ氏によると、こうしたボットネットワークの売買に際して採用されている価格決定方式の1つが、「フォロワーの増加数によって価格を決める」という方式です。しかし、ボット販売業者側が「ボットアカウントでフォローさせる」こともできるため、ボットでの宣伝を行う悪質ファッションブランドはボット販売業者に「大量のボットにフォローされた結果、人間のフォロワーは一切増えていないのに、多額を支払わないといけない」という詐欺を行われる可能性があります。こうした事情についてベロッティ氏は「結局、詐欺師が詐欺られていますね」とコメントしています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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