Windows 10はバージョンアップを重ねるたびに本当に遅くなっているのか?検証結果はこんな感じ
by okubax
Windows 10は年におよそ2回、大きなバージョンアップデートがリリースされます。バージョンアップデートの度に新しい機能や仕様変更が行われ、「前のバージョンよりも遅くなった」「アップデートでパフォーマンスが低下した」という感想がささやかれることもしばしば。そこで、「Windows 10はバージョンアップで本当に遅くなっているのか」という疑問について、Windowsに関するさまざまな実験を行っているYouTuberNTDEV氏が各バージョンでパフォーマンスや速度を比較した結果をブログで公開しています。
State of the Windows, part 2: Did Windows 10 slow down with each feature update? – NTDEV
https://ntdotdev.wordpress.com/2021/02/21/state-of-the-windows-part-2-did-windows-10-slow-down-with-each-feature-update/
記事作成時点でリリースされたWindows 10バージョンとOSビルド、コードネーム、リリース年月日をまとめた表が以下。
バージョン | OSビルド | コードネーム | リリース年月日 |
1507 | 10240 | Threshold 1 | 2015年7月29日 |
1511 | 10586 | Threshold 2 | 2015年11月10日 |
1607 | 14393 | Redstone 1(RS1) | 2016年8月2日 |
1703 | 15063 | Redstone 2(RS2) | 2017年4月5日 |
1709 | 16299 | Redstone 3(RS3) | 2017年10月17日 |
1803 | 17134 | Redstone 4(RS4) | 2018年4月30日 |
1809 | 17763 | Redstone 5(RS5) | 2018年11月13日 |
1903 | 18362 | 19H1 | 2019年5月21日 |
1909 | 18363 | 19H2 | 2019年11月12日 |
2004 | 19041 | 20H1 | 2020年5月27日 |
20H2 | 19042 | 20H2 | 2020年10月20日 |
21H1 | 19043 | 21H1 | 2021年5月18日 |
今回、NTDEV氏はビルド10240から19041までを比較しました。パフォーマンスの比較を行う上で、ハイパーバイザーとしてHyper-Vを使用し、各ビルドをクリーンインストールしています。そして、ビルドごとに4GBのRAMと4コア・32GBの固定ディスクを使用したそうです。
◆01:インストール時間
OSのセットアップは、エンドユーザーがOSに触れる最初の機会となります。Windowsは可能な限りスムーズかつ効率的にインストールできるように進歩しているはず。各ビルドで一貫して正確な結果を得るために、Windows Imaging Formatを使ったインストールイメージを使用しています。また、ヒューマンエラーを可能な限り減らすために、無人応答ファイルを使用しています。
その結果が以下の折れ線グラフ。最もインストールに時間がかかったのはビルド17763のRS5で、18分40秒でした。Windows 10のビルドが後になればなるほど、使用するディスク領域が増えるため、書き込み時間が長くなり、セットアップにかかる時間も長くなるはず。しかし、実際には「バージョンアップを重ねるたびにセットアップに時間がかかるようになった」とはいえず、RS5以降はむしろセットアップ時間が短くなっていることがわかります。
◆02:起動時間
次に、ビルドごとの起動時間を、高速スタートアップ機能を無効にした状態で計測した結果が以下。ビルド15063で起動時間が速くなっているものの、全体の傾向としてはバージョンアップを重ねるごとに増加しています。
また、ビルドごとの再起動時間をまとめたグラフを見ると、起動時間と非常によく似ていることがわかります。NTDEV氏は、「Windowsの新しいビルドに実装された新しいセキュリティ技術や新しいサービスが原因で、後続のビルドほど起動に時間がかかるようになった」と指摘しています。
◆03:Win32アプリ
近年のWindows 10は64ビットへの移行を進めているものの、やはり一部のアプリは32ビット対応のまま。NTDEV氏は、エクスプローラー、メモ帳、Internet Explorer、ペイント、レジストリエディタ、MSConfig、msinfo32、ワードパッド、コントロールパネル、タスクマネージャーなど、Windows内蔵のWin32アプリを使って、その平均起動時間を測定しました。
その結果が以下の折れ線グラフで、ビルド17763以降で従来の倍以上の時間がかかるようになっています。
◆04:UWPアプリケーション
ユニバーサルWindowsプラットフォーム(UWP)はWindows 10で導入されたシステムで、複数のデバイス上で動作するアプリケーションを単一のフレームワーク上に統合する仕組みです。今回はMicrosoft Edge、設定、電卓、カレンダー、マップ、映画とテレビ、Groove Music、People、Microsoftストア、ボイスレコーダーを使って、UWPアプリの平均起動時間を測定しました。
結果は以下の通りで、ビルドを追うごとにUWPの平均起動時間が伸びていることがわかります。最も起動に時間がかかったのはビルド18363の1分3秒で、ビルド10240のおよそ5倍もの時間がかかっています。NTDEV氏は「UWPアプリの起動は、バージョンアップを重ねるごとに遅くなりました」と論じています。
◆05:Windowsサーチ
次にNTDEV氏は、Windowsサーチを使って、Cドライブ内にあるmsinfo32のインスタンスをすべて検索するのにかかる時間を計測しました。その結果は以下の通り。ビルドによってバラバラで、全体的な増加傾向あるいは減少傾向も見られませんでした。
◆06:GDIストレステスト
続いて、Windowsにおける直線や曲線の描画、フォントのレンダリング、パレットの制御といった処理を行うGraphics Device Interface(GDI)のパフォーマンスを比較します。NTDEV氏は、ADeltaX氏が開発したREGDIで、最大しきい値より少し低い9900GDIハンドルのレンダリングにかかる時間を測定しました。
結果は以下の通りで、ビルド18363まではレンダリング時間が増加傾向にありますが、ビルド19041でガクッと下がっており、NTDEV氏は「ビルド19041でGDIのパフォーマンス周りに修正が入ったように見えます」とコメントしています。
◆07:エクスプローラーストレステスト
NTDEV氏は、Windows標準のファイラーであるエクスプローラーのインスタンスを開くシンプルなバッチスクリプトを作成し、GDIレンダリングの速度と32ビットアプリの起動時間を同時に測定しました。その結果が以下のグラフ。
NTDEV氏は「ビルド17763からは、またしても時間が大きく伸びています。GDIのストレステストではビルド19041でGDI性能が劇的に向上したことを確認しましたが、それでもエクスプローラーストレステストでは時間短縮にさほど貢献していません。つまり、Win32アプリの起動速度が遅くなったことが、エクスプローラーストレステストでの長時間化につながっていると考えられます」とみています。
◆08:Windows Defenderのクイックスキャン
Windows標準のアンチウイルスソフトウェアであるWindows Defenderは、バージョンアップデートの度に新しい機能が追加され、ますますWindowsと切り離せない存在となりました。そんなWindows Defenderのクイックスキャンにかかる時間を測定した結果が、以下のグラフです。
最初の2つのビルドではかなり時間がかかっていますが、ビルド14393から始まったWindows 10 Anniversary Update以降で劇的に早くなっています。その後上下はしているものの、最初のビルド10240と比べると、クイックスキャンにかかる時間は短くなっていることがわかります。
◆09:ディスクI/Oパフォーマンス
I/Oサブシステムのパフォーマンスをテストするために、NTDEV氏はMicrosoftが提供するオープンソースのコマンドラインツールであるDiskpdを使用。設定のコマンドはこんな感じ。
diskspd -c1G -d300 -r -w40 -o32 -t8 -b64k -Sh -L
ディスクの読み取りと書き込みの合計入出力をまとめたグラフが以下。数値が高いほど、パフォーマンスがいいことを示しています。最もスコアがよかったのはビルド17763。そこからビルド19041までほぼ横ばいなので、おそらくビルド17763でI/Oサブシステムが改善されたのだろうとNTDEV氏はみています。
◆10:シャットダウン速度
NTDEV氏は、「OSのシャットダウン速度は、OSを使用する上ではそれほど重要性は高くない」としながらも、各ビルドでのシャットダウンにかかる時間を計測しています。
それぞれのシャットダウンにかかる時間をまとめた以下のグラフを見ると、ビルド10586やビルド14393は5~6秒でシャットダウンしているものの、ほとんどが10秒ほどでシャットダウンしており、「バージョンアップに応じてシャットダウンに時間がかかっている」という現象は確認されませんでした。
10種類のテストを踏まえた上で、NTDEV氏は「Windows 10は時間の経過とともに遅くなりましたか?」という問いに対して「わずかにそういう部分はありますが、セキュリティやI/Oサブシステムはバージョンアップによって改善が見られています」と結論づけました。
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