なぜ天候が悪いと頭痛になってしまうのか?
天気の変化に伴って体が反応するという人は多く、そうした人は天候が悪くなると頭痛になったり関節が痛くなったりすることがあります。そんな「天候が悪くなると頭痛がする」メカニズムについて、イギリスのダラム大学で神経科学の教授を務めるアマンダ・エリソン氏が解説しています。
Can bad weather really cause headaches?
https://theconversation.com/can-bad-weather-really-cause-headaches-158258
具体的ににどれほどの人が天候に関連する頭痛に苦しんでいるのかを測定するのは難しいものの、2004年の研究では、偏頭痛に苦しむ人の60%以上が「頭痛が気象条件に影響される」と考えていることがわかっています。また、日本における頭痛薬の売り上げを調査した2015年の研究では、平均気圧が下がって天候が悪化すると、頭痛薬の売上高が大幅に上昇することが示されました。
多くの人々が天候の悪化に伴って頭痛を経験する理由について、エリソン氏は複数のメカニズムがあると指摘しています。
◆1:副鼻腔に関連する頭痛
副鼻腔(ふくびくう)とは、鼻周辺の顔面の骨にある空洞のことであり、上顎洞(じょうがくどう)・篩骨洞(しこつどう)・前頭洞(ぜんとうどう)・蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)という4種の空洞が、左右に1組ずつ存在しています。
それぞれの空洞は空気で満たされているため、気圧の変化によって耳が詰まったりするのと同様に、副鼻腔内の気圧と外部の気圧に差が生じると炎症や痛みが発生することがあるとのこと。痛みが発生する箇所は額、目の間、頬、頭部など場合によってさまざまであり、どの副鼻腔が最も気圧の影響を受けているのかによって左右されるそうです。
また、雨が降るなどして湿度が上昇すると副鼻腔内の粘液が増加し、空気中に含まれるアレルギー源やほこり、粒子などが副鼻腔に付着しやすくなります。これにより、副鼻腔のうっ血や炎症、不快感などが引き起こされて頭痛につながる可能性があるとのこと。
◆2:血流に関連する頭痛
気圧の影響で頭痛が生じるもう1つのメカニズムとして、気圧の変化に伴って脳血管系の血流が変化することで頭痛が発生するというものがあります。脳は人間にとって非常に重要な部分であるため、血管と脳組織を隔てる血液脳関門という機構によって、血液中に含まれる可能性がある病原体や毒素から脳組織を防御しています。
脳血管系には通常時よりも血管が広がりすぎると活性化する受容体が存在し、問題が発生した時に警告を発するシステムになっているとのこと。この受容体の活性化は人間にとって「痛み」として認識されるため、気圧の変化によって頭痛が発生してしまうことがあるとエリソン氏は指摘しました。
また、エリソン氏は頭痛が起きた際の対処法についても解説しています。
◆対処法
悪化した天候を変えることはできないため、頭痛が発生した際の対処法としては鎮痛剤や鼻詰まりを改善する充血除去薬の使用が一般的です。また、天候が悪化しそうな時はチューインガムをかむなどして激しく口を動かすと、口・鼻・耳管を介して副鼻腔内の圧力を均等にすることができるそうです。
しかし、必ずしも頭痛の原因が天候のせいだとは限りません。悪い姿勢のせいで長時間にわたり筋肉が収縮したことで血流不足が発生したり、ストレスでアドレナリンやコルチゾールの分泌量が増えて炎症が発生したりすることで脳の血管が広がり、頭痛が引き起こされる場合もあるとのこと。そのため、適切な姿勢を心がけたりストレスを軽減したりすることが頭痛の予防に役立つ可能性があるほか、しっかり水分や栄養を摂取することも重要です。
さらに、セロトニンやドーパミンは脳に向かう痛みの信号を減らすことで天然の鎮痛剤として作用します。天候が悪い時はセロトニンの分泌を活性化させるチョコレートを食べたり、友人とチャットをしたり、好きな映画を見たりしてホルモンバランスを保つことも、頭痛が日常生活に及ぼす悪影響を軽減するとエリソン氏は述べました。
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