10億円の資金調達に成功したメモ機能搭載ウェブブラウザ「Beam」とは？

2021年内にベータ版をリリースすることを目標に開発されているメモ機能搭載ウェブブラウザ「Beam」が950万ドル(約10億円)の資金調達に成功しました。「Beam」とはいったいどんなブラウザなのか、その基本的な機能と開発された経緯を、スタートアップ企業に関するニュースサイトShiftedが解説しています。

Reinventing the browser? Beam raises capital to take on Google | Sifted
https://sifted.eu/articles/beam/

Beamの開発を主導するドム・レカ氏は、2010年にメールクライアントアプリ「Sparrow」を開発しました。Sparrowは人気を博し、2012年にはGoogleによって買収されました。その後、レカ氏は2015年にフードデリバリーサービス「Stuart」を立ち上げます。Stuartの事業でも成功を収めたレカ氏ですが、次第に自らの事業に疑問を感じるようになり、2017年にはStuartを退社しました。当時の心境についてレカ氏は、「時給15ドル(約1570円)のフードデリバリーの仕事を得るために、150人ほどの人々がオフィスの前の階段に並んでいました。その光景を見たときに、私の取り組んで来た技術の大部分は社会にとって有害なのではないかと感じました」と語っています。

その後、レカ氏は1973年に哲学者のイヴァン・イリイチ氏が執筆した書籍「Tools for Conviviality(コンヴィヴィアリティのための道具)」を読み、「技術は人間の視野を広げ、自律性を促進するものであるべきだ」と考えるようになりました。

また、同時期にレカ氏はメモアプリ「Roam Research」を使い始めます。レカ氏は、Roam Researchの基本的な機能には満足したものの、閲覧中のウェブページとRoam Researchの画面を行き来することに嫌気が差したとのこと。

そこで、レカ氏はウェブアプリやウェブブラウザ以外のアプリにメモ機能を任せるのではなく、ウェブブラウザ自体にメモ機能を搭載することを思いつきました。

レカ氏が開発するウェブブラウザBeamでは、ウェブページを開く度に、そのウェブページに紐付けられたメモが生成されます。ユーザーは自由にメモの内容を編集することができ、後からメモの内容を検索することもできるとのこと。レカ氏は、「通常のブラウザで長時間調べ物をしても、いくつかのブックマークとほんの少しの記憶だけが残ります。Beamではブラウジングと同時にメモを残すことで、ユーザー独自の知識ベースを作成できます」とBeamの優位な点をアピールしています。

また、Beamのユーザーは自らのメモへのリンクをSNSなどで共有することができます。さらに、興味のある語句から他人が残したメモを検索する機能も提供する予定とのこと。

レカ氏はBeamの特徴を投資家たちに説明し、950万ドル(約10億円)の資金調達に成功しました。また、レカ氏はBeamが将来的にブラウザ市場で数％のシェアを獲得することで、GoogleがSafariのデフォルト検索エンジンになるために多額の支払いを続けているのと同様に、Googleからの支払いを得る事が可能になると考えています。

Googleはデフォルト検索エンジンの位置を保つためAppleに相当な額の支払いを続けている - GIGAZINE

BeamはSafariなどのウェブブラウザに使われているレンダリングエンジン「WebKit」をベースに、Mac向けのアプリとして開発中。2021年4月に内部アルファ版をリリースし、9月にはクローズドベータ版をリリースする予定とのこと。また、Beamの公式サイトではベータテスターを募集しています。

Beam
https://beamapp.co/